4時間にも及ぶ夏季オリンピックのオープニングセレモニーは、時間が経つのを忘れさせるほど変化に富み素晴らしかった。パリの歴史を見続けてきたセーヌ川を、世界の選手たちが90の船に分乗し約6キロに渡って行進すること自体が、前代未聞のこと。これはパリ・オリンピック開催が決まった時にマクロン大統領が発表し、当時はあまりにも野心的で、現実離れしていて果たしてその実現が可能かどうかと疑う人が多かった。
街中を飾るパリオリンピックのポスター。 |
メインストリートのウインドーや壁もオリンピック一色。 |
ところが、意表をついたオープニングセレモニーは息を呑むほどの卓越した内容で、これこそオリンピック精神の理想的な表れだと感慨深かった。それは、フランス主催のオリンピックとはいえ、フランスの祭典ではなく、世界のアスリートたちの祭典だということを、はっきりと形あるもので表したためだ。アメリカのレディ・ガガが華やかにセーヌ河畔で歌い踊り、カナダの歌手セリーヌ・ディオンがエッフェル塔で絶唱したり、聖火ランナーにスペインのナダルやルーマニアのコマネチ、アメリカのカール・ルイスなど様々な国のスポーツの偉大なレジェンドも登場し国際色豊か。
もちろんフランスを代表するオペラ座ダンサーたちの優美なバレーも欠かさないし、元気いっぱいのフレンチカンカンも祭典のムードを盛り上げる。過去のオリンピックの映像が流れるかと思うと、フランスの歴史で必ず語られる革命は,、頭を手にするマリー・アントワネットや真っ赤に染まるコンシエルジュリ―に表現され、ルーヴル美術館の展示作品の主役たちの大きな顔のパネルが、セーヌ川から顔を出してセレモニーを見ている。グランパレの屋根の上でフランス国旗をまとったオペラ歌手が国家を高らかに歌い、橋の上ではショパンコンクールで優勝したピアニストが清涼なクラシックを奏でる。若いデザイナーたちのファッショーも長い間続き、セーヌ川の上に浮かぶ刹那的な島の上では、ジョン・レノンの「イマジン」を女性歌手が透き通るような声で歌い、感動の輪が広がる。
クライマックスは聖火台の点火。これがナンと気球の形。私の推測では、熱気球を発明したのはフランス人だからだと思う。最大の感動は、チュイルリー公園内の気球の聖火台に火が灯された瞬間。気球はゆっくりとパリの空高くのぼり、その時エディット・ピアフの「愛の賛歌」のメロディーが静かに流れ、その後そのメロディーはエッフェル塔に向かい、無数のシルバービーズや刺繍の白いドレスに身を包んだセリーヌ・ディオンに受け継がれ、熱唱となり、セレモニーの最後を飾ったのです。
チュイルリー公園内の聖火台は気球の形。 聖火が灯された瞬間ゆっくりと舞い上がった感動的な一瞬。 |
100年ぶりのパリオリンピックのオープニングセレモニーは、期待をはるかに超える感動の連続。すべてが心の奥深くに響くほど。とりわけ、金属製の馬に乗った旗手が、オリンピックの旗を風にひらめかせながらセーヌ川を勢いよく走る姿は忘れられない。これには意味がり、「友情と連帯感に満ちたオリンピックの精神を広めるため」。
4時間という長い間テレビで実況中継をみたのは初めて。途中で目を離せないほどの内容が濃いセレモニー。政治的混乱が続いているフランス。でも、反対派の議員たちでさえ褒めているパーフォマンスでした。階段を上り聖火を点火したり、派手な花火で終える従来のセレモニーが、古く感じられるほど斬新。多くの発明を世界に先駆けてしてきたフランス人ならではの発案、演出。これで国がしっかり団結し、政権争いを止めるといいのに・・・
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