リニューアル工事のために1年間閉鎖されていたジャックマール=アンドレ美術館が、再オープンに伴い開催しているのは「ボルゲーゼ美術館の傑作展」。この美術館は、裕福な銀行家アンドレとその妻ジャックマールが建築させた19世紀の優美な大邸宅。芸術をこよなく愛し、多くのコレクションをしていた夫妻でした。特にイタリア・ルネッサンスに傾倒し、その時期の名作も数多く収集していた夫妻なので、今回の展覧会はお二人にふさわしい。
19世紀にアンドレとジャックマール夫妻が建築させた邸宅。 建物の手前には美しい庭園があります。 |
ローマにあるボルゲーゼ美術館はイタリア・ルネッサンスとバロックの作品が多く、しかもため息が出るほどの名作ばかり。美術館はもともと枢機卿スピキオーネ(スピオーネ)・ボルゲーゼ(1577-1633)の別邸として17世紀に建築されたもの。彼は教王パウルス5世の甥にあたる。ボルゲーゼ家は代々芸術家を庇護していて、そのお蔭で、多くの優秀なアーティストが生まれています。特にマルカントニオ4世・ボルゲーゼは破格の美術愛好家で、絵画や彫刻のコレクションは増える一方。彼はナポレオン支持者でもあった。その子供カミッロ・フィリッポ・ボルゲーゼがナポレオン1世皇帝の妹ポリーヌと結婚し、フランスと深い絆が生まれているのです。ボルゲーゼ美術館が国立美術館になったのは1903年で、イタリア・ルネッサンスとバロックの宝庫として多くの訪問者を迎えている。
17世紀に建築されたローマのボルゲーゼ家の別荘。 現在はボルゲーゼ美術館。 |
ナポレオン・ボナパルトの時代にボルゲーゼ家の多くの芸術作品がフランスに送られ、今でもルーヴル美術館で展示されているのがあるけれど、今回ジャックマール=アンドレ美術館で見られる40の作品は、傑作ぞろい。その上、すべて借りているだけ。来年1月5日以降はパリで鑑賞できない。それだけに貴重。
絶対に見逃したくない展覧会なので、平日のランチタイムだったらすいているかも、と期待していたけれど、とんでもない、すごい行列。ルネサンス発祥国イタリアの、当時の芸術性豊かな空気が会場いっぱいにみなぎっていて、誰もがそこに身を置く幸せに浸っている印象を受けました。
展示室はテーマによって8つに別かれている。 |
私が絶対に見たかった、 ラファエロ作の「一角獣を抱く貴婦人」。1506年頃の作品で、 レオナル・ド・ダヴィンチの「モナ・リザ」と類似点があるとされている。 裕福な貴族の女性ならではの風雅な服装、豪華なジュエリー、 落ち着きある態度、冷静な視線。静謐な美しさがあり、ただじっと見ていたい。 |
ボッティチェリの 「聖母子、若い洗礼者ヨハネと6人の天使」 珍しい円形の作品で思い切った試みとされている。 |
「レダと白鳥」 レオナルド・ダ・ヴィンチの作品に基づいた絵で、 彼が手掛けたオリジナルは紛失したが、 それに最も忠実に描かれた最も古い作品。 ギリシャ神話の全能の神ゼウスが白鳥に変身し、 スパルタ王の妻レダを誘惑し、 2人の間に子供が生まれた物語がテーマ。 |
カラヴァッジョの「果物籠を持つ少年」1596年頃の油絵。 ボルゲーゼ枢機卿がコレクションを始めた初期に購入。 カラヴァッジョは光と影の明暗をはっきり区別する技法で、 ドラマティックな絵を描いていたが、彼の人生そのものも劇的だった。 |
ヴェロネーゼの「洗礼者ヨハネの予言」 1566-1570頃の油絵。 中央に描かれた洗礼者ヨハネによって、 右側の3人のレビ人と左端の救世主キリストが分かれている。 ヴェネツィアの教会からボルゲーゼ家に寄贈された作品。 |
ルーベンス作「スザンナと長老たち」 貞淑な妻スザンナが水浴びしている時、 老人たちに言い寄られている場面が描かれていて、 スザンナの躍動感がある姿に迫力がある。 |
展覧会会場はこの豪奢な階段を上った2階奥。 ぜひもう一度行きたい。 |
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