2010年6月8日

イヴ・サンローランの追悼コンサート

イヴ・サンローランが亡くなって
早くも2年。
その偉大な死に、世界中が衝撃を受け、
サルコジ大統領夫妻列席の元に、
国葬に近い葬儀が
サン・ロック教会で行われたのが、
まだ記憶に新しいというのに。

昨年の一周年記念は
サン・ロック教会でミサ。
そして今年の2周年記念は
オペラ・バスティーユのオリヴィエ・メシアン・ホールで特別コンサート。
クラシックが好きで、バイロイトの音楽祭に頻繁に行っていたサンローラン。
そうした彼のために、50年間のパートナーであり、
イヴ・サンローラン社経営者だった
ピエール・ベルジェならではの、愛情がこもった贈り物。

黒一色の壁に、
ふたりの親しい友人だったアンディー・ウォーホール作の、サンローランの肖像画だけが飾られ、
その手前にグランドピアノ。
ピアノとヴァイオリンの
素晴らしい演奏の間、
肖像画のサンローランが
私たちと一緒に演奏を楽しみ、
あるいは、何かを語りかけているような思いに何度もとらえられた、
感動的な演奏会。
招待者はサンローランとベルジェの身近にいた
人ばかり。
シラク夫人、ヴェルサイユ宮殿総監、元文化大臣、
女優カトリーヌ・ドヌーヴ、サンローランのミューズだったルルとべテイ、彫刻家ラランヌ、
クリスティーズ社長 etc
ほとんどの人が黒か白の品のある服装。
そうした人々を見ていると、
サンローランを取り巻いていた世界が
いかに高尚だったかわかります。
演奏会の合間にベルジェが挨拶。
「このコンサートに来て下さって、ほんとうにありがとうございます」
ベルジェの声は哀愁を帯びていて、
それだけに感謝の言葉が胸いっぱいに広がります。
たしかに、誰も彼も忙しい人ばかり。
それなのに、この日のために集まったことに、
ベルジェは感動したのでしょう。
地方や外国に行っていた人もいたかもしれない。
それでも、この日にこれほどの人々が集まった、
それはサンローランへの変わらない愛のしるし。
この日出席した人は、サンローランに思いをはせると同時に、
かけがいのない人を失ったベルジェを支えるためでもあったのではないかと、
私には思えました。