2012年11月10日

オルセイの素晴らしい展覧会

大人気のオルセイ美術館
久しぶりの充実感と満足感を味わえる展覧会を、パリの
オルセイ美術館で開催中。
「印象派とモード」がそのテーマ。

19世紀後半のナポレオン3世の第二帝政時代は、経済が潤っていた時世。そのために装いも華やかで、豊かさがみなぎっているものばかり。それに加えて、妃ウジェニーがマリー・アントワネットに心酔していたために、
王妃の時代のフレアがたっぷりで、
リボンやレース飾り、刺繡が施された贅沢なドレスが大流行。
優美な装いを復活させた
ナポレオン3世の妃ウジェニー
こうした時代に頭角をあらわしてきたのが印象派の画家たち。
それまでは、歴史上重要な人物の肖像画や宗教画が多かったのに比べ、印象派の画家たちはそれから開放されたかのように、
一般の人の日常的な場面を手がけるようになったのです。

帝政が崩壊し第三共和体制になっても、服装の大きな変化は見られず、ウエストを絞り
ヴォリューム感のあるスカートという装い。
印象派の画家たちはそうした女性の服装に大いに興味を抱き、重要視し、絵に描いていたのです。彼らが描く絵の中の女性たちは、皆、小説のヒロインのように麗しく、人生を楽しんでいるような人ばかり。

印象派の画家はモードのクリエーターとさえ言う人がいますが、
たしかに絵に描かれたモードはどれも素晴らしい。

モネ作
そうした絵から現在のデザイナーがインスピレーションを受け、そこにコンテンポラリーを加味し、
世の賞賛をかうことも多い。このように、印象派とモードの関係は深いのです。

モネ、マネ、ルノワール、ドガなどの巨匠たちが描いた、着飾った女性たちの名作がいくつもつらなる展覧会会場。
こうした絵画を見るだけでうっとりするのに、それに拍車をかけているのが、その時代に製作した本物のドレス。
昼間のドレスがあり、午後のドレスがあり、夜のドレスがある。
タフタやシルクの光沢は、時を経過しているのに衰えることなく煌びやかに輝いている。
当時、女性は外出の歳には帽子を被り、手袋をし、刺繡やリボン飾りのある靴をはいていた、それも展示してある。

非日常の世界をさまよえる特別な空間は格別。
そこに現代の息吹きを加えているのが、壁際に並べられた、赤いビロードとゴールドの背もたれと脚のチェア。それは、パリコレのショーの場にいるような錯覚を起こさせます。
ルノワール作
チェアに描かれた招待客の名を見ると、ロダン、セザンヌ、フローベル、ジュルジュ・サンド、ロスチャイルド男爵などと書いてある。こうしたユーモアがパリらしくていい。

夢の世界に包まれたまま先に行くと、突然、目の前に開かれる人工芝の広々とした空間。
鳥の鳴き声が聞こえ、モネの大きな「草上の昼食」の絵が見える。ルノワールやバジルの名作もある。絵の中で憩う女性は誰も彼も着飾っている。顔に、服に、陽光を浴びているその光景は平和そのもの。

そう、そこは人生の悦びを満喫する場なのです。このように、心底から堪能できる素晴らしい演出の、パリならではの展覧会です。

「印象派とモード」
オルセイ美術館
2013年1月20日まで