家出したの |
ワタシ一度家出をしたことがあるの、
ホント。
家出といっても、べつにママンとケンカしたからとか、この家が気に入らないからとか、そういうリッパな理由があったからではないのヨ。
たまたま窓があいていて、
それでそこをスルリと通ってお外にいっただけ。そういうのが得意なの。
お外はとってもいい気分だった。
世の中がこんなに広いと思ってもみなかったわ。
アパルトマンがいっぱいあるし、
そこにはいろいろな人が住んでいるようだし、バルコニーに咲いているお花も色がたくさんあってきれい。
空も大きくて雲も初めてみたわ。
ああいうのに乗ってみたい、そしていろいろな国に行くの、アフリカにも行きたい。
あそこは動物にとって天国なんだってね。
ママンがいつか言っていたわ。
「シャトレ、シャトレ、どこにいるの?」
突然、聞き覚えのある声。
屋根にのぼってごきげん |
「どこに行ったの?」
しつこい声がまだ聞こえる。
でもじっと息をひそめるワタシ。
ママンはベッドや、テーブル、イスの下を見て回っては
ワタシの名前を呼んでいる。
「ほんとうにどこにいるの?」
今度はバスルームに行ってバスタブを調べるママン。
ときどきワタシがそこで泳ぐ練習をするからなの。
「あッ みてごらん、かっこいいネコだ!」
どこからか男の子の声。
ワタシをみてそう言ったの。
それを聞いてママンが外を見て、
ワタシと目がばっちりあったのです。
心配かけて反省しているワタシ |
「まあ、そんなところにいたの、早く帰っていらっしゃい」そうはいってもとても帰りたくない。お外のほうがずっといいの。だからワタシは大声を出しました。「イヤッ!」
「そんなこと言っていないで帰っていらっしゃい。ほらキミの好物よ」
そう言ってママンは缶詰をチラチラさせてワタシを誘惑するのに必死。でもそうはいかない。
「イヤッ!、それよりお外のほうがいいの」
すご~く頑張ったワタシ。
そうしたら今度は長い紐をもってきてひらひらひらひら。
これはナゼかすごく刺激的でガマンできないの。
とうとうそれにつられて家に戻ったの。
「すごく心配したのよ。
もう二度とこんなことしないでね」
ママンは泣きそうな声で言う。
でも、ワタシにはたのしい思い出だったわ。
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