2011年12月3日

フランソワ・ルサージュ さようなら

ルサージュの代表作。
イヴ・サンローランのためのゴッホの
ひまわりとアイリスをテーマにした作品

刺繍の巨匠、フランソワ・ルサージュが12月1日に亡くなりました。82歳。

オート・クチュールに欠かせない人物であっただけに、その死は惜しまれています。

フランソワの父がパリでモード界と密接な関係を保ち、ルサージュの名を広めていたころ、フランソワはアメリカ征服の大きな希望を抱きながらハリウッドに向かい、多くの女優の顧客を得ていました。そうしたときに父親が病に倒れ、急遽フランスに戻ることになったのです。

ルサージュの自宅。
ベル・エポックの素晴らしい邸宅

20歳で父を失ったフランソワは、その後のオート・クチュールの飛躍に伴い目覚しい発展を遂げ、さらに、スパンコールや、パール、ビーズ、リボンなどを刺繍に取り入れ、斬新さをモード界にもたらし、センセーションを起こしたほど。

クリスチャン・ディオール、イヴ・サンローラン、クリスチャン・ラクロワなどのコレクションに欠かせないルサージュの刺繍は、フランスの貴重な財産。

ひと針ひと針手で刺繍をするその作業は、気が遠くなるほどきめ細かく、フランスが世界に誇る立派な芸術作品。彼の残したものは、はかり知れないほど偉大。

私の宝物のひとつ
ルサージュ作のブレスレット
「私はアーティストではなく、単なる刺繍の職人です」
と、謙虚に、けれども大きな喜びを浮かべながら語ってくれたことがあります。
フランソワ・ルサージュは永遠に旅立ちました。
けれども彼のアトリエは、彼の才能を彼が望むとおりに継承していくはず。