2013年4月19日

日本の漆の長持、不思議な旅


マザランが所有していた
17世紀の日本の長持。
漆が四面と中にもびっしり施されています。

17世紀に日本で製作された、
漆加工をほどこした長持が、
フランス人の興味をひいています。

作品自体も素晴らしいけれど、
それを購入したのが
フランス歴史上最大の国王と謳われる、
ルイ14世の宰相であり枢機卿の
マザランだったことが判明。
そのために興味が倍増しているのです。

青年時代のルイ14世に、
国王の地位安泰のために、
絶対王政を確立することの重要性を説き、             
国王を支持しながら
それを実現させたマザラン。

当時、彼の威勢は王をしのぐほどのものだったのです。
親政をおこなうようになった
1661年のルイ14世

マザランが世を去った1661年から
親政をおこない、
ブルボン王朝の偉大さを
世界に示したルイ14世ですが、
その基盤を築いたのがマザラン。

マザランは政治にたけていただけでなく、
文芸に造詣が深く、世界の美術品や蔵書を
長年にわたって収集。
抜きん出た人物であるだけに、
クオリティも数も破格。
叢書は、パリ市内にある
マザランの名を冠した図書館に保管され、
美術品は子孫に引き継がれ、
その多くがオークションで様々な人手にわたっていったのです。

今回話題になっている長持は、偶然に発見されたもの。
あるフランス人夫妻が、
家を処分して老人ホームに住む決心をし、
家具調度品もあることだしと、
オークショナーに頼むことにし、
たまたまテレビで見かけたブイヤックに依頼し、
自宅に来てもらう。


イタリア出身の
偉大なマザラン。
話がはずみ、
ではワインでも、と父親が自慢していたワイン箱を開けて
ワインを取り出し乾杯。
そのときブイヤックは目にとめたのです。
ワイン入れに漆加工がしてあるのを。

その家具を注意深く見ていたブイヤックは
大衝撃を受けました。
ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館
(私が一番好きな博物館!!)で目した
マザランのコレクションとあまりにも似ていたからです。

急遽家に戻った彼は、
詳細にわたる調査をし、
その結果、長持はマザランが
オランダ人から購入した四つの家具のひとつであることが判明。
年の経過と共にいろいろな人の手にわたり、
フランス人夫妻の父親がロンドンの競売で買って、
ワイン入れにしていたのでした。


マリー・アントワネットの
コレクションのひとつ
革命を逃れた貴重な作品。
長持は6月9日にオークションで売られることになりました。
1640年ー1650年の貴重な作品だそうで、
世界のコレクターの目が光っています。
何しろ日本の漆は大評判で、マリー・アントワネットもコレクションしていたほど魅力的なのだから。
こうした宝物が隠れているのも歴史ある国ならでは。

我が家のカーヴも一度真剣に見てみよう。
何しろベルエポックの時代の建物だから、
今までに暮していた人が何か残しているかもしれない、と春の暖かい空気にふれながら思ったりしています。