2015年2月23日

久しぶりの「サモトラケのニケ」


美しくなった「サモトラケのニケ」
修復を行い汚れも取りさらった姿を見せる「サモトラケのニケ」を久しぶりに観賞。紀元前2世紀頃に創作されたと推定されているこの勝利を告げる女神像は、どの角度から見ても優美でありながら力強い。

私が特に惹かれるのは、正面向って斜め右から見る姿。硬い大理石で出来ているにもかかわらず、胸の鼓動が聞こえるようだし、薄い布地が風で体にからまる動きが、しかも、目に見えない風さえ感じられ、何度見ても感動しないではいられません。

勢いをつけて舞い上がり
天窓を打ち破りそうな気配。
ギリシャの彫刻は「ミロのヴィーナス」をはじめとし、このほかにも多数ルーヴルに展示してある。けれども、「サモトラケのニケ」ほど惹かれることはない。この彫刻には魂が込められているからだと、自分では解釈している。言い換えれば命が通っているのです。

ニケを見ていると、通常語られているように、勝利を祝うために天から舞い降りたというより、勢いをつけて羽を羽ばたかせながら、上方にあるガラス張りの天窓を打ち破り、空高く舞い、生まれ故郷のギリシャに、サモトラケ島に向って戻って行くように思われてならない。

窮屈そうで
かわいそう。
美術館の解説に天から舞い降りたとあるから、そういう見方をしていたけれど、自由に自己流に見ると、羽を精一杯広げて、今、飛び立とうとしているとなってしまう。

ニケはきっと自由に空を飛びたいのだ。それを望んでいるのだ、青い海も空も見えない石造りの美術館の中にいたくない、と叫んでいるように思われて仕方ない。見れば見るほどその想いが強くなる。

いつかニケはそれを実現するかもしれない、そうしてあげたい、と思う。この思いが強いのは、羽や体、衣の汚れが落とされて、さらなる軽やかさが感じられるからかもしれない。