ナポレオン皇帝の最初の妃ジョゼフィーヌが、パリ近郊のマルメゾン城をこよなく愛し、そこで生涯を閉じたのはよく知られているし、訪問した日本人も多い。けれども徒歩で10分の所にあるもうひとつのシャトー、ボア=プレオは、ほとんど知られていない。 私も訪問したことがない。
ところが、「フランス芸術報道組合」の定期総会を、何とそのシャトーでおこなうことになり、メンバー20人がパリから貸し切りバスに乗って、まるで遠足気分で向かったのです。総会は一年間の活動とか経費詳細などの発表が主で、正直言ってほとんど興味がない。でも、ボア=プレオ城で開催となると、別。
まず、マルメゾン城をディレクターの丁寧な解説付きで見学。休館日に特別に開けて下さったのです。その後歩いてボア=プレオ城に向かう。そこで約1時間の定期総会。
いつ見ても優美なマルメゾン城 |
コンサートルームは久しぶりに拝見。 ジョゼフィーヌだけでなく、 娘も息子もピアノがとても上手でした。 |
庭園のバラが満開。 ジョゼフィーヌは250種ものバラを育てていたのです。 |
爽やかな庭園で笑顔で記念撮影。 庭園をたくさん歩くので、気軽な服装と歩きやすい靴。 |
17世紀に建築されたボア=プレオ城は、多くの人の手を経て1920年にアメリカ人の大富豪夫妻が購入し、1926年に国に寄贈。その時の条件は、ナポレオンに捧げるミュージアムにすること。それに従い、皇帝がセント・ヘレナに捕らわれの身として暮らしていた時の館が再現されたり、そこで皇帝が実際に使用していた家具も展示し、7500冊もの蔵書やその他の資料なども展示。
マルメゾン城から徒歩で10分後、ボア=ブレオ城が見えてきました。 |
シャトーの手前で、かつてのフランス皇后の像が待っています。 |
均整が取れた優美な姿を見せるボア=ブレオ城。 ジョゼフィーヌの時代には左右に翼棟があったのを、 後年のオーナーが取り去って庭園を広げたのです。 |
ジョゼフィーヌが世を去った後、数人の人の手を経て改造もされ、その間にシャトーがかなり老朽化し、大々的修復を行うために、30年ほど閉めることになったのです。
「リニューアル後最初にシャトーの中に入るのは、あなたたち」
とディレクターに言われ、大歓声。このような場で総会を開けるのは、幸運だし名誉なこと。
シャンデリアや金箔の装飾、窓からは広い庭園が見える。 ここで1時間の総会があり、その後はドリンクタイム。 |
修復工事はほとんど終わり、今年秋に再オープンし、ジョゼフィーヌが最初の夫との間に持ったウジェーヌに捧げる展覧会を開催する予定。彼は母ジョゼフィーヌ亡き後、シャトーのオーナーになっていたのです。
ナポレオンはこの義理の息子の軍人としての勇気と実力を高くかい、イタリア副王に任命し、ナポレオンの数多くの戦いで活躍。ウジェーヌはバイエルンの王女と結婚し、二人の間に生まれた長女ジョゼフィーヌは、スウェーデン王太子オスカルの妃になり、後に国妃となり、その子孫が代々スウェーデン国王です。
ジョゼフィーヌ亡き後オーナーになった 息子のウジェーヌ。 |
ウジェーヌと結婚した バイエルン王女、アウグステ。 |
ウジェーヌ夫妻の長女ジョゼフィーヌ。 スウェーデン王太子オスカルと結婚し、 後に夫が国王オスカル1世になり、ジョゼフィーヌは王妃に。 |
ナポレオンの妻ジョゼフィーヌがマルメゾン城を買ったのは1799年で、当時、ナポレオンはエジプト遠征でフランスを留守にしていたのです。その間にジョゼフィーヌは勝手に高額でシャトーを買い、ナポレオンは最初は激怒。でも、妻に恋い焦がれていた夫は、支払いに苦しみながらも簡単に許したのです。
高価な家具や絵画、彫刻で飾ったマルメゾン城がすっかり気に入っジョゼフィーヌは、そのすぐ隣のボア=プレオ城を1810年に手に入れ、二つのシャトーの間にあった壁を取り払って敷地を拡大。子供が生まれないために皇帝から離婚された後も、皇后の称号を保っていたジョゼフィーヌは、この二つのシャトーに最後の日まで暮らしていました。
離婚後マルメゾンに暮らすようになったジョゼフィーヌは、 そこでも洗練された社交を続け、多くの崇拝者を得ていました。 ナポレオンの敵だったロシア皇帝アレクサンドル1世を迎えるジョゼフィーヌ。 左がアレクサンドル1世。右手に息子と娘、2人の孫。 ジョゼフィーヌの前の小さい孫は後のナポレオン3世。 |
ナポレオンが失脚し、セント・ヘレナ島に流刑される前に、亡き妻ジョゼフィーヌがこよなく愛し生涯を閉じたマルメゾン城を訪れ、さめざめと涙を流したと記録されています。粗野だったナポレオン皇帝の宮廷を、優美な装いと社交で補い、フランスのアール・ドゥ・ヴィーヴルを世界に認知させたジョゼフィーヌは、ナポレオンが「比類なき女性」と呼んだ人。彼女の吐息が至る所で感じられるマルメゾン城とボア=プレオ城。ジョゼフィーヌが外国からフランスにもたらした花々が咲く庭園も見逃せない。
コメントを投稿