2025年1月19日

ユトリロの母、シュザンヌ・ヴァラドン展(5月26日まで)

 個性的な顔で多くの画家たちを魅了し、長年モデルをつとめ、自らも特有な絵を描いていたシュザンヌ・ヴァラドンのポンピドゥーセンターでの展覧会は、とても興味深い。息子モーリス・ユトリロは繊細な感性を持ち、詩情あふれる風景画を多く手掛けたのに比べ、その母シュザンヌ・ヴァラドンは人体の力強さがひしひしと伝わってくる、色彩豊かな人物画が多い。

シュザンヌ・ヴァラドン
(1865-1938)
1898年の自画像
息子モーリス・ユトリロが7歳の時の貴重な写真。

父親が誰かはっきりわからない子供として生まれ、10代初期から洗濯や給仕、サーカの曲芸など苦労連続の生活が続いていた。生活の場は常にモンマルトルだった。その後、そこに集まる画家たちの注目を集めるようになり、モデルとして生計を立てる一方、画家たちのモデルをつとめながら絵を描く方法を学び取り、絵筆をとるようになる。

ルノワール作「都会のダンス」
モデルになったヴァラドンは17歳だった。

今回の展覧会では、特に、人物の裸がいかに素晴らしいか、強烈なタッチで描いたのが深く印象に残る。しかも、女性だけでなく、男性の裸体もあり、彼女がいかに勇気ある女性で、時代に先駆けていたかわかる。

「アダムとイヴ」1900年
「生きる喜び」1911年

「綱を打つ人」1914年
「青い部屋」1923年

独学で画家になったヴァラドンの作品は、テーマも画風も自由で、力強い線、鮮明な色が衝撃的。そこには、体の奥まで響くような激しさがある。当時は女性画家が少なく、しかもタブーとされていた裸体を描いたヴァラドンは、稀に見る強靭な精神の持ち主だったにちがいない。