2021年8月30日

いつものパリが戻ってきたみたい

今年はフランス国内でヴァカンスを、と政府がすすめ、割とそれを素直に受け入れたフランス人が多く、ちょっとびっくりしたり、感心したり。コロナから身を守るためです。

そのお蔭で、フランスの海辺や山のホテル、レストランは大繁盛。キャンプ場も、ほぼいっぱい。例年より業績がいいそう。それに比べてパリはツーリストも少なく、大赤字。でも、ゆっくりと以前のパリを取り戻している感じ。

パリで結婚記念写真を撮るのは、誰もが憧れること。
以前は中国人が多かったけれど、今年はヨーロッパの人がほとんど。

ぴったりドアを閉めていたお土産屋さんも、徐々に開いてきました。


そうした中で、
「衛生パス」反対、ワクチン義務化反対のデモは、毎週土曜に繰り返されている。

ワクチンが義務化しつつあり、それに反対するデモは土曜日に行われているけれど、毎回参加する人数は減っている。ワクチンを打たないと仕事を失うし、レストランにもカフェにも入れない生活など耐えられないから、政府が決めたことに従わざるを得ない。当初は、強硬だと思っていたけれど、この案は、結局、コロナから身を守るためにいい、と思うようになった人が増えているのは事実。

久々にイタリアレストランの前を通ったら、
仲良しの看板娘、ブランカちゃんがいて、とっても嬉しかった。
彼女はあまり、喜んでいなかった、というより警戒心が強かったみたい。
これからは、以前のようにこの前を通るのが楽しみニャ。

2021年8月25日

パリの犬たち 251

 髪の毛の色が気になる


「〇〇ちゃん、久しぶりだね。元気そうだけど、ナンか変」
 
「やっぱり、似合わない? これ、ママンの好みなの」
「ネ、〇〇ちゃんのママン、どうして急に〇〇ちゃんのヘアがブルーになったの?」
 
「ヴァカンスをフレンチ・リヴィエラで楽しんでいたの。
あそこの海がとってもキレイなブルー。それに合わせて同じ色にしたのよ。
パリではちょっと目立つけれど、秋になったら、秋に合うカラーにするの」
「ワタシのママンは個性的なオシャレが好きなの。
このアニマル・モチーフのトップスも変わっているでしょ。
ママンと一緒に歩いていると、たくさんの人が振り返って、
ちょっとセレブ気分だワン」

2021年8月19日

パリの美観、「衛生パス」で一変

 美術館や映画館に加えて、デパートやレストラン、カフェ、2万㎡以上のショッピングモールの中に入るのに「衛生パス」が必要になって、いろいろと変わってきているパリ。

ワクチンを2回打っていなくても、コロナウイルス検査の陰性証明書があればいいのだから、それを気軽に受けられるように、あちらこちらで検査を実施している。薬局の前とか、オペラ座近く、シャンゼリゼ大通りでも3カ所にテントを張って検査しているのには驚く。

中にはトランク片手に入って行く人もいる。多分、これからヴァカンスに行くために、「衛生パス」が必要なのでしょう。

多くの薬局の前に、検査のテントが張られている。


デーパト前にも検査専用のテント。

オペラ座近くのテントには、
「予約なしで検査。無料。抗原検査は5分、PCRは24時間で結果」と書いてあり、
結構、多くの人が並んでいる。

ヴァカンスシーズンなので、ツーリストの姿も多い。アジアからの人は少ないけれど、ヨーロッパのツーリストがたくさん来ていて、やはり、ルーヴル美術館は大人気。様子を見に行くと、「衛生パス」を持っているかどうかを調べる専門のテントが入り口前に2つあり、そこでチェックを受けて、OKだと、美術館の入り口に向かう列に並ぶ資格があるといった具合。

とはいえ、荷物検査や入場の人数制限もあるから、すごい行列。幸い、今年のパリは猛暑にならないらしい。

ピラミッドの手前に「衛生パス」を持っているか検査するテントがあり、
そこで合格すると、ルーヴル美術館に入る列に並べる。
どちらも長い列。

それにしても、あちこちにテントが張られていて、パリの美観などと贅沢を言っていられない現状。ちなみに、コロナウイルス検査は、フランス人やフランス滞在許可証を持っている外国人は無料。ツーリストは有料。

レストランやカフェのテラス席も「衛生パス」が必要。
以前は、シャンセリゼのテラス席は満席だったのに、今はガラガラ。

ワクチン、ワクチンと、連日、政府は接種を呼びかけ、テレビでも頻繁に、楽し気にワクチンを打ってもらっている映像を流しているけれど、まだまだ懐疑的な人が多い。現存するワクチンの効果が、半年たつと薄れるという説もあり、そんなワクチンなら必要ない、と思っている人も少なくない。

10月半ばから、ウイルス検査は有料にする、とマクロン大統領は声明したけれど、脅しになどのらないと抵抗する人や、「衛生パス」や職業によって義務化されるワクチン接種に反対の人が集まって、毎週、土曜日に、20万人を超えるデモが主要都市で行われているフランス。

凱旋門を取り囲む大通りのプラタナスの足元に、
雑草がはびこっているのは、衝撃。
コロナウイルスで、ここまで心配りができないような感じ。

経営不振でつぶれる店舗が日に日に増え、ウインドウに製品が並んでいる代わりに、「閉店」と無造作に書いた板が張られていたり、手入れをする余裕がないのか、目抜き通りだというのに、雑草が伸び放題。コロナがずっと続いたら、いったい、どうなることやら・・・・

麗しいパリが以前の姿を取り戻すのは、一体、いつ?

2021年8月15日

凱旋門、クリストによるラッピング開始

今、異なった姿に変わりつつある凱旋門。パリに長年暮らしていた、ブルガリア出身のアーティスト、クリスト(1935-2020)のプロジェクトが、9月半ばの完成を目指して、現在、作業が進行中。

クリストが長年抱いていた、凱旋門を布で包む作業開始。
どれほどこの日を待っていたかと思うと、胸が締め付けられる。
クリストは昨年、世を去ったのです。

クリストは、青年時代をパリで過ごしていた60年代に、すでに凱旋門を布ですっぽり包む構想を持っていたそう。それが、2021年にやっと実現される。残念なことに、クリストはその完成を見ることなく、昨年、高齢で世を去りましたが、構想のデッサンなどが残っていたために、彼の甥を中心として、実現可能に。

凱旋門に施された彫刻をいためないように、頑丈に保護。
それ自体が、すでに芸術、足場の組み方にさえ、繊細な心遣いが感じられる。

フランス軍を導く勝利の女神像。
兵たちを奮い立たせ、まるで、工事用の保護を打ち破り、
勝利を目指して前進を促す女神のように見える

クリストが作品を通して訴えたいのは、石やコンクリートの堅い建造物に、新しい命を与えること。ひだを付けた布地ですっぽり包むと、風で布地が揺れたり、光が反射したりし、息をしているように思える。石造りの冷たさが消え、生物のような温かさが感じられる。クリストは、それを目指していたのです。

作業に見とれる人が結構多い。

クリストの構想に従い、2万5000㎡のブルーがかった銀色の布で覆われ、3000mのコードで布地を固定させた、やさしさがある姿を目のまえにした時、人々は、凱旋門が、ナポレオンのアウステルリッツ戦勝記念に建築開始されたことを完全に忘れると思う。そして、まるで、今、生まれたばかりの、生命があり呼吸している自然物のように感じるはず。

見慣れた凱旋門がひだを入れた布で包まれ、風に揺れ、
息が通った建造物になる日が待ち遠しい。

クリストは1985年に、パリ最古の橋「ポンヌフ」を布で包み、パリの風景が一気に変わったような感動を与えた芸術家。つかの間のアートだからこそ、心に訴えるものが大きい。彼の悲願だった凱旋門のラッピング完成まで、何度か足を運び、作業の進行を見るつもり。

切手になった
クリストとジャンヌ=クロード夫人による、
ポンヌフのラッピング。

2021年8月9日

パリ・オリンピック

 2024年にパリで開催されるオリンピックは、フランスでもっとも大きなイヴェントになると、今から、その意気込みがすごい。

引継ぎのために東京に行っているパリ市長アンヌ・イダルゴが、オリンピック旗を受け取る時間に合わせて、パリでは、フランス空軍アクロバットチームが、赤、白、青の三色旗のスモークを華々しくまき散らしながら、エッフェル塔の上空を数回旋回。

トロカデロには、東京オリンピックでメダルを獲得し、一足先に帰国していた選手たちが集まり、大勢の群衆たちに囲まれ、大喝采を受け、国際宇宙ステーションで指揮を取るフランス人宇宙飛行士トマ・ペスケも、サクソフォンを奏でてお祝い。パリオリンピックに向けての一致団結が、ひしひしと伝わってくる日でした。

2024年のパリ・オリンピックのロゴ。
金メダル、オリンピックの炎、フランスを代表する女性マリアンヌの融合。

7月26日から8月11日まで続くオリンピックの準備は、着々と進んでいて、パリ市内では、エッフェル塔の足元にあるシャンドマルスや、トロカデロに様々な会場ができる。選手村はパリの北郊外で、順調に建築が進んでいる。火災で大損害を受けたノートルダム大聖堂も、修復が終わり一般公開されるはずだし、コンコルド広場も会場のひとつになる。さすがフランスだ、と称賛をかうのは、馬術競技をヴェルサイユ宮殿で行うこと。歴史的モニュメントが多い国ならでは。うらやましいほど、文化的。

マクロン大統領が、すでに、オープニング・セレモニーはセーヌ川で行うと発表したので、かなり個性的。フランス人特有の才知あふれる、格別なオリンピックを期待できそう。ぜひ、どれか、競技を観戦したい。可能であれば、オープニング・セレモニーも、と、今から、期待でドキドキ。

2021年8月4日

アートと花壇

久しぶりに公園を歩いていたら、いつもと違う花壇が見える。しかも、一カ所だけでなく、あちらにもこちらにもある。色が鮮やかで、すごく印象的。

あでやかで、個性的な色合いの花々がいっぱいの花壇が、あちらこちらに。

これは何か意味があるにちがいない。そう思って花壇に近づくと、何やら小さな説明がある。どれどれ、と短い説明を読むと、シャルル・ガルニエという文字が見える。エッ、まさか、あのシャルル・ガルニエ?

花壇の脇にある説明。

半信半疑で説明を読むと、たしかに、あの、シャルル・ガルニエ。そう、オペラ座の建築家。この花壇の着想は、彼が手がけたエギナ島にあるアファイア神殿の破風彫刻の、多色画法(クロモリトグラフィー)。ガルニエによるそのクロモリトグラフィーは、1858年に建築誌に発表されていると書かれていて、その一部の写真まである。そこに使われている色と、花壇の花の色は、なるほど、よく似ている。

ガルニエのクロモリトグラフィーと同じ色の花々。
見れば見るほど、似ている。

ガルニエがそうしたことを手がけたことを知らなかったし、アファイア神殿も知らなかった。なので、興味にかられていろいろと調べる。

5世紀に建築されたエギナ島のアファイア神殿。
一連の破風彫刻は1811年に発掘され、
現在、ドイツのグリュプトテーク美術館に展示されています。

アフェア神殿はギリシャのエギナ島にある神殿で、紀元前5世紀に女神アファイアに捧げるために建築。ドーリア式の柱の2階建て、というのが大きな特徴。シャルル・ガルニエがギリシャを旅した際に、その神殿の美しい姿に感激。特に、トロイ戦争を題材とした破風彫刻に打たれ、ガルニエは多くの色を付けて建築当時の姿を再現。それが建築誌に発表されたのです。

シャルル・ガルニエ(1825-1898)の名を不朽のものとした、
パリの「オペラ・ガルニエ」。1862年建築開始。

この神殿から、ガルニエがいかに多くの影響を受けたかは、オペラ座の正面を見るとよくわかる。気になったので、オペラ・ガルニエを見に行くと、まさに、パリの中のギリシャ神殿。彼はギリシャへの旅で、古代建築に情熱を抱くようになったのです。


感性が磨かれる要素が、いたる所にあるパリ。

公園の花壇をきっかけに、いろいろなことがわかり、パリが文化都市であることを再認識。やはりこの街は、格別。