2021年8月15日

凱旋門、クリストによるラッピング開始

今、異なった姿に変わりつつある凱旋門。パリに長年暮らしていた、ブルガリア出身のアーティスト、クリスト(1935-2020)のプロジェクトが、9月半ばの完成を目指して、現在、作業が進行中。

クリストが長年抱いていた、凱旋門を布で包む作業開始。
どれほどこの日を待っていたかと思うと、胸が締め付けられる。
クリストは昨年、世を去ったのです。

クリストは、青年時代をパリで過ごしていた60年代に、すでに凱旋門を布ですっぽり包む構想を持っていたそう。それが、2021年にやっと実現される。残念なことに、クリストはその完成を見ることなく、昨年、高齢で世を去りましたが、構想のデッサンなどが残っていたために、彼の甥を中心として、実現可能に。

凱旋門に施された彫刻をいためないように、頑丈に保護。
それ自体が、すでに芸術、足場の組み方にさえ、繊細な心遣いが感じられる。

フランス軍を導く勝利の女神像。
兵たちを奮い立たせ、まるで、工事用の保護を打ち破り、
勝利を目指して前進を促す女神のように見える

クリストが作品を通して訴えたいのは、石やコンクリートの堅い建造物に、新しい命を与えること。ひだを付けた布地ですっぽり包むと、風で布地が揺れたり、光が反射したりし、息をしているように思える。石造りの冷たさが消え、生物のような温かさが感じられる。クリストは、それを目指していたのです。

作業に見とれる人が結構多い。

クリストの構想に従い、2万5000㎡のブルーがかった銀色の布で覆われ、3000mのコードで布地を固定させた、やさしさがある姿を目のまえにした時、人々は、凱旋門が、ナポレオンのアウステルリッツ戦勝記念に建築開始されたことを完全に忘れると思う。そして、まるで、今、生まれたばかりの、生命があり呼吸している自然物のように感じるはず。

見慣れた凱旋門がひだを入れた布で包まれ、風に揺れ、
息が通った建造物になる日が待ち遠しい。

クリストは1985年に、パリ最古の橋「ポンヌフ」を布で包み、パリの風景が一気に変わったような感動を与えた芸術家。つかの間のアートだからこそ、心に訴えるものが大きい。彼の悲願だった凱旋門のラッピング完成まで、何度か足を運び、作業の進行を見るつもり。

切手になった
クリストとジャンヌ=クロード夫人による、
ポンヌフのラッピング。