2021年10月9日

プティ・パレ、ジャン=ミシェル・オトニエル展覧会

 1900年のパリ万博の際に建築されたプティ・パレで、詩的情緒あふれる展覧会を開催中。展覧会は「ナルキッソスの定理」と呼ばれ、それを実現したアーティストはジャン=ミシェル・オトニエル。パレ・ロワイヤルのメトロ入り口の作者です。カラフルな800個ものガラスの球体がつながり合って、王冠を描いている。その入り口はメトロ開設100年記念の作品。

フランス現代アーティストを代表するオトニエルが、今回プティ・パレに実現したのは、ポエティックなおとぎ話の世界。それは、プティ・パレのエントランスへと導く階段から始まります。幅広い階段の中央には、ブルーのレンガで水の流れを表現し、まるで小川か滝が流れているよう。ブルーのレンガは日の光を浴びてキラキラと輝き、角度を変えて見るたびに様々なブルーになり、そこに動きや生命さえも感じらる。光の当たり方によって、大きな宝石のようにも見える。


1900年に建築されたプティ・パレ。その階段を飾るブルーのレンガ。
水の流れを見せるジャン=ミシェル・オトニエルの作品。

宝石のような煌めきに心を奪われる。


プティ・パレの中に入り、ホールを横切って中庭に出ると、ここがパリの中心かと思うほど、素朴な自然が広がっている。その自然に囲まれた池の中には、金色の球が絡み合って大きな花を描いている。それをオトニエルは「ナルキッソスの定理」と名付けた。水に映る自分の姿に心を奪われ、水中に入り、やがて花になるギリシャ神話の男性。自分自身を水に映すことによって、周囲の世界をも映し出すのだとオトニエルは語っています。池は3つあり、瞑想にふけりたくなるような、不思議な静けさがあたりに漂っています。

オトニエルが「ナルキッソスの定理」と呼ぶ池の中の花。
球体の中では金箔が光っている。


プティ・パレ内の大きな展示会場には、オトニエルのカラフルな作品が多数展示されていて、幻想的なメルヘンの世界のよう。球体のガラスを結んだ様々なカラーとフォルムの作品は、オトニエルが数年前から手がけていて、結びには始まりも終わりもなく、そこに永遠に続く流れがあるのだと作者は語っています。

色とりどりのガラスの球体が複雑に絡み合う結び。

何となく、見知らぬ宇宙が目の前にあるようにも思える。

日本の菊をイメージした気品ある作品は、
特別に18世紀の家具の中に展示。
オトニエルは日本に格別な愛着を抱いているアーティスト。

中で座ることも出来るアゴラ。

螺旋階段の上の天井では、きらびやかなシャンデリアが視線をとらえます。高さ4メートル、直径3メートル、重さ600㎏のそのシャンデリアは、「夜の王冠」と名付けられ、ヴェネツィアのムラーノ島でクリエイトしたガラスの球をつなげている。色とりどりの様々な大きさの球体が複雑に絡み合いながら、清涼感がある美しい輝きを放射線状に散りばめています。このシャンデリアはプティ・パレの天井を永久に飾るそう。

展覧会の後もプティ・パレの天井を飾る「夜の王冠」


帰りに再びブルーのレンガの階段を見る。ナンて美しいブルー。プティ・パレのオトニエルの数多くの作品の中で、私はこのブルーの階段が一番好き。身も心も吸い込まれるほど美しい。

吸い込まれるほど美しいブルー。


ジャン=ミシェル・オトニエルの60点を超える作品の展覧会は、
2022年1月2日まで。入場無料。この中庭にはカフェ・レストランもあり、
「ナルキッソスの定理」を鑑賞しながら、ゆったりとしたひと時を過ごせます。