2022年4月13日

誰もいない日のルーヴル美術館

特別許可をいただいて、休館日のルーヴル美術館を訪問できたのは、忘れられいほど印象深いものでした。

静まり返った美術館には、当然人気がなく、そこに展示されている美術品が、ここは自分たちの住まいだと伸び伸びしているような気配がする。絵画はともかく、冷たい大理石の彫刻でさえ、生気が感じられたのは不思議。もしかしたら、本当に、誰もいない日には動いたり語り合ったりしているのかもしれない。

静まり返っているルーヴル美術館。
厳かで、同時に神秘的で気が引き締まるほど。


通常、人、人、人で全身をしっかり見ることもできない「サモトラケのニケ」も、ダリュの階段の上で思いっきり羽を広げ、強い生命力にあふれた姿を見せている。戦勝を祝って、サモトラキ島の女神ニケが天から船のへさきに舞い降りた瞬間をとらえていると解説されている。

ダリュの階段の上に君臨する「サモトラケのニケ」は神々しいほど美しい。
人の姿がまったく見えない高く広い空間の中のニケは、
思わず祈りを捧げたいほど崇高。


静けさの中で彫像と向き合っていると、
命を授かり、呼吸する女神が目の前にいるように思える。
何と貴重なひととき。
記憶の奥深くにずっと生き続けるほどの感激に、身も心も震える。


私には、逆に、明り取りがある天井を突き破って、空に向かって羽ばたいていきそうにも思える。それは、この白い大理石の彫像には魂が宿っていて、紺碧のエーゲ海に、生まれ故郷に帰りたい、と体全体で語っているように感じるからかもしれない。誰もいないルーヴルで彫像と向き合っていると、その思いがますます深まる。

ルーヴルに数多く展示されている彫刻の中で、私が最も好きなのはこの「サモトラケのニケ」。固い大理石で、女神の体に巻き付く薄い布地のゆらめきを、生き生きと表現しているのを見ていると、他のすべてが色あせたように感じられてならない。紀元前2世紀のヘレニズム文化を生んだ当時の彫刻家たちの技量と感性の素晴らしさに、ただただ感服。

この日、思わぬ光景が目に止まりました。出口に向かう階段の途中で、何となく後ろを振り返ったら、壁の一角から美術館の外観が見えたのです。それが、まるでピラミッドのような形で思わず歓声をあげたほど。多分、訪問客がいない日だったので精神的な余裕があり、このような発見があったのかも。

ご覧の通り、まるでガラス張りのピラミッドの窓から
美術館外観を見ているよう。