2022年7月25日

「マチュ・ピチュとペルーの宝物」展

 3000年に渡る古代ペルーの歴史を辿る展覧会が、トロカデロのシャイヨー宮にある建築遺産博物館で開催中。約200点もの貴重な作品の中には、今までペルーを離れたことがない宝物もあり、連日、大変な人気を呼んでいます。

マチュ・ピチュは15世紀に最盛期を迎えたインカ帝国の遺跡で、アンデス山脈の標高2430mの高い位置にあります。1533年、スペイン人に征服され、インカ帝国は滅びますが、それ以前にアンデス文明が栄えていました。ところが、アンデス文明には文字がなかったために、文献が何も残っていない。そのために、残念ながら詳しいことはわからず、マチュ・ピチュの多くのことは深いミステリーに包まれています。

多くの謎を抱えるマチュ・ビチュの写真と説明。

現在分かっているのは、マチュ・ピチュの遺跡が高い位置にあることから、帝国の王侯貴族が夏の暑さから逃れるための避暑地で、そのための住まいがあったとか、太陽神にささげる神殿があった、など。

かつて栄えていたインカ帝国は、建築や金銀細工が優れていたようで、今回の展覧会でそれをじっくりと鑑賞できます。

インカ帝国の支配者は、
亡き後も豪華な金銀の装飾で身を飾っていたようです。

ターバンを飾る力強い装飾は、
南米に多く生息する動物の王者ジャガーと、
地上の権力を表していて、権力者の象徴とされている。


優美なシルバーの容器。
周囲にはミトロジーが彫り込まれている。
繊細な職人技は驚異的。

表現豊かなミトロジーのモチーフが魅力的な器。


「キープ」と呼ばれる、数を記録するオブジェ。
主に食料の貯蔵量を記録するために、紐に結び目をつけていたとされているが、
最近の研究では、情報伝達や記録も語っているのではないかと見られている。


発掘された神殿の小さい模型も展示されている。
太陽を崇めるインカ国王では、神殿はピラミッド型で、
階段の外側は誰でものぼれるが、中に入れるのは神官、政治家、高位の人のみ。

いろいろと学びが多い展覧会です。
2022年9月4日まで開催。

2022年7月17日

太陽が強すぎる だから軽装。でも、お洒落

南仏は山火事が相次ぎ、フランスのほぼ全土が異常に高い気温。

そうした中、7月14日の祭典が終り、本格的ヴァカンスシーズンに入り、 南へ向かう高速道路は800KMもの渋滞。多分そうだろうと思いながらも、車を走らせるフランス人。夏のヴァカンスに欠かせない風物詩なのです。

パリのツーリストも急に増え、気軽な服装で歩いているヤングジェネレーションが、目に眩しい。今年は背中に自由を与える服が大流行。街で見かけたステキな女性たちのご紹介です。

足元まで届くコットンの背中あきドレス。
フェミニンで涼しそう。

コケティッシュなパリジェンヌ。
お洒落な背中のラインと、ショートブーツのセンスが最高。


ウルトラミニでさっそうと歩く姿が、いかにも若々しい。


ツーリストの大胆な服装にパリにいるのを忘れます。

おへそを見せるのは、自由の象徴だとパリジェンヌは言います。
レザーパンツとの組み合わせが個性的。

2022年7月15日

7 月14日、久しぶりに華やかな軍事行進

 快晴に恵まれた7月14日のパリ祭。コロナのために規模が縮小され、寂しかった過去2回の軍事行進を忘れさせるほど煌びやか。

三色のスモークを散りばめながらパリ上空を飛ぶアクロバット飛行で開幕した今年の軍事行進は、華麗そのもの。シャンゼリゼを行進する兵士たちの顔も輝いていて、悦びがはち切れそう。今年はウクライナに隣接する国々の兵士も参加し、フランスとの連帯感を示していました。

歓声にこたえるように、華麗な姿を見せるアクロバット飛行。

フランスの3色旗がひときわ美しく思えます。


今年の花形は、何と言っても初登場のドローン。アメリカが設計したMQ-9-リーパードローンは、2014年から活躍しているそう。通常、都会で見れないだけに大人気。65機の戦闘機やヘリコプターの飛行の最後を飾ったのが、このドローン。

フランスが世界に誇る有能な戦闘機。


軍事行進に初めて参加した高性能のドローン。


フランスの軍事力の強さを再確認した大々的な行進。夜はエッフェル塔の下でクラシックコンサート、そして花火。

世界中に届ける愛の印、ハートが夜空を飾ります。

花火でパリの美しさを倍増。


7月14日。
その日はフランス人の愛国心が高まる日。

2022年7月12日

ルーヴル美術館 見逃したくない「アポロンのギャラリー」

 ルーヴルは、優れた絵画や彫刻を多数展示している美術館。それは、誰でも知っていることで、その鑑賞のために、連日、長い行列が出来ている。

でも、いつも、残念に思っていることがあるのです。それは「サモトラケのニケ」の左後にある「アポロンの間」あるいは、「アポロンのギャラリー」の存在を知らない人が多いこと。この部屋の歴史も装飾も重要だし、何よりも、歴代の王侯貴族が実際に身に付けていたフランスの宝飾品を展示しているのに・・・・と私は大不満。

フランスの君主たちのコレクションや、
国王、王妃などが着用した稀有なジュエリーを鑑賞できる「アポロンのギャラリー」


まず、「アポロンのギャラリー」の建築を命じたのは、かのルイ14世。

「偉大な国王は、立派な建造物を後世に残すべきです」
などと、全面的な信頼を寄せていた宰相マザランが語ったようで、ルイ14世は壮麗なヴェルサイユ宮殿建築だけでなく、自分の騎馬像を中央に置いた広場をパリ市内に建築させたりして、幾世紀にも渡って「歴史上最大の国王」と崇められたかったのです。
そうしたル14世が、当時、居城としていたルーヴル宮殿内に、レセプションを開く大広間を設けることを思いつき、建築家ルイ・ル・ヴォーと画家シャルル・ル・ブランに約60mの長いギャラリー建築を依頼します。
天井には神話が描かれ、壁は肖像画や彫刻で飾られ、金箔が至る所で華麗な輝きを放つこの回廊は、太陽王ルイ14世にちなんで「アポロンのギャラリー」と呼ばれ、後年、ヴェルサイユ宮殿の「鏡の回廊」のモデルとなります。
ここに国王のコレクションや、外国君主からの贈答品が展示されるようになったのは、1861年。ナポレオン3世による第二帝政が最盛期を迎えていたころ。

17世紀以降の代々のフランス国王が、
外国の君主たちから受け取った贈答品が、ガラスケースの中に展示されています。

16世紀末にイタリアで製作された、色とりどりの大理石のモザイクテーブル。
金箔を施した重厚な脚は、1850年作。


この部屋の圧巻は、何と言っても宝飾品。
ルーヴル美術館の様々な部屋に展示、あるいは保管されていた、王家の人々が実際に着用していた数点のジュエリーは、2020年にリノベーションされた「アポロンのギャラリー」に集められ、それぞれが競うように華麗な輝きを散りばめているのです。

ルイ15世が戴冠式で使用した冠。
貴石はその後取り外され、レプリカがはめられていますが、
それ以外は、すべて当時のまま。国王が使用した、現存する唯一の冠。





フランス革命を生き延びたルイ16世とマリー・アントワネットの間に生まれた王女は
後に結婚しアングレーム公爵夫人となり、再び宮廷生活を味わいます。
彼女のブレスレットとベルト飾り。
ルビーとダイヤモンドのゴージャスなジュエリー。
  

ナポレオンの2番目のお妃、マリー・ルイーズのパリュール。

展示されている数々の宝飾品には、それぞれ貴重な物語が潜んでいる。その中でもっとも興味深いのは、ルイ15世が戴冠式で被った王冠を飾っていた「ル・レジャン」と呼ばれる140、64カラットのダイヤモンド。
これは後に王冠から外して保管し、ルイ16世が王冠や帽子飾りにしたり、マリー・アントワネットがブローチにしたり愛用していました。

140,64カラットのダイヤモンド「ル・レジャン」

このダイヤモンドが発見されたのは1698年、インドの南でした。「ル・レジャン」と名付けられたのは、ルイ14世の甥、オルレアン公フィリップ2 世が購入したため。彼はルイ14世が逝去した時から、5歳の年齢で国王になったルイ15世の摂政を務めていたのです。「摂政」はフランス語で「レジャン」。それがこのダイヤモンドの名の由来。
革命の際に他の宝石共々盗まれましたが、幸いなことに翌年に無事に発見。時が流れ、革命の混乱の中から彗星のごとくに出現したナポレオンが、第一統領になったときに「ル・レジャン」を買ったのです。何かとブルボン朝と張り合っていたナポレオンは、皇帝になる戴冠式で、剣の先にこのダイヤモンドをつけます。
王政復古で王座に就いたシャルル10世も、ナポレオン3世のお妃ウジェニーも使用したダイヤモンド。こうした比類なき歴史を刻む「ル・レジャン」を「アポロンのギャラリー」で、間近に見れるのはほんとうに素晴らしいこと。

これほどの宝物を展示している「アポロンのギャラリー」は
閉館の時間に合わせて重厚な扉がビシッと閉まります。


幻想的なライティングの中で国の宝物を鑑賞していると、
王朝時代にタイムスリップしたような錯覚を起こす。

かつてのフランスの豊かさ、優れた美的感性、緻密な職人技に感嘆しないではいられないこの宝物庫を見逃すのは、あまりにももったいない。

2022年7月7日

カルティエ リッツパリでニュー・コレクション発表

 一日限りのニュー・コレクションのお披露目をしたカルティエ。その日のために選んだ会場は、かの伝説的ホテル、リッツパリ。

コレクションのテーマは「世界の美」。世界各地で目にする変化に富んだ美を、様々な貴石を使用してジュエリーで表現する、独創性あふれるコンセプト。

リッツパリの貴族的装飾のサロンが「世界の美」展示会場。


広い世界で煌めく美。
それは、ときには湖や滝、花、畑などの自然であり、ときには軽やかに羽ばたく鳥であり、力強くそれでいてしなやかな動きを見せるタイガーやパンテールであり、人が生み出した絵画や建築・・・・このように美はいたる所にある。そこからインスピレーションを得たジュエリーたちが、それぞれの物語を語りかけるのです。


ギリシャの森からインスピレーションを得たネックレス、イヤリング、リング。
オーバルのエメラルドの鮮やかな輝きが心と目に沁みる。


6角形にカットされたエメラルドのグリーンとサンゴの赤が、
相乗効果を発揮するヴォリュームあるリング。


ピカソを筆頭とするキュビズムを着想源とする腕時計。
文字盤の上に寝そべるパンテールは、メゾンのアイコン。


モザンビーク産の25,11カラットのルビーが艶やかなネックレス。
トップはネックレスから取り外して、ブローチとして使える。


羽を広げた鳥が幾何学的にデザインされた腕時計。


展示会場の隣のサロンでは、ピアノ演奏を聴きながら会話に花が咲きます。



ホテルの中庭は好天気に恵まれて、ティータイムに最適。
思いがかけなく旧友にも出会い、
チョコレートケーキ、イチゴケーキ、グレーㇷ゚フルーツジュースを挟んで
おしゃべりに時間が経つのを忘れた、久々の幸せ時間。

2022年7月5日

ヴァン クリーフ&アーペル 「ダイヤモンドのレジェンド」展

 7 月4日から7日までのオート・クチュール・コレクション発表の期間中、コロナ以前と同じとはいえないけれど、かなり活気を取り戻しているパリ。

やはり、華やかな雰囲気はパリにふさわしい。この期間にハイジュエリーのメゾンがニューコレクションを発表するので、ますますゴージャス。街によろこびが漲っている感じで、ウキウキしないではいられない。

いくつか招待状を受け取ったメゾンの中で、特に見たいと思ったのはヴァン クリーフ&アーペル。蜷川実花さんのインパクトある写真とヴァン クリーフ&アーペルのジュエリーが呼応し合う、昨年のエクスポジションが記憶に新しく、今回はどのような感動を与えてくれるか、楽しみで、楽しみで、真っ先に足を運びました。

ヴァンドーム広場に面した18世紀の旧貴族館がその会場。招待客リストに書かれている名前と、いつも身に付けている身分証明書を係りの人が比べて、OKサインが出てやっと中に入れる厳重な警戒。それはそうです。高価なジュエリーがたくさん展示されているのだから、当然。

今回のテーマは「ダイアモンドのレジェンド」。
南アフリカ共和国に囲まれたレソトで発見された、910カラットのダイヤモンドがその主役。熟考に熟考を重ね、熟練の技巧でカットし、サファイヤやルビーなどと組み合わせ、メゾン特有のミステリ―セッティングを駆使したコレクションの発表。

レソトで発掘された910カラット(右上が原石)のダイヤモンドをカットし、
他の貴石と組み合わせたジュエリーは25点。どれも無比の価値と美しさを誇ります。


楕円形のような形の展示会場は、すべての壁をレソトのカラフルな風景画が飾っていて、不思議な国に入ったよう。中央は、大きな空間になっていて、ジュエリーは壁際に並べられている。驚いたことに、どれもガラスケースに入っていない。そのために、ジュエリーの語りが聞こえるような錯覚を起こす。

レソトの風景をカラフルに描いた絵と、照明を落とした暗さが相まって生む、
不思議な空間。
パリにいることを忘れさせるインパクト。
天井の唯一の照明が、ダイヤモンドのように輝いている。


オートクチュールを連想させる、滑らかなリボン飾りつきネックレス。
リボン飾りは取り外し可能。


アールデコの斬新で動きがあるジュエリー。

感嘆を誘うゴージャスなネックレス。
言葉を失うほどの煌めき。

シックな色合いと存在感あるフォルムが印象的なブレスレット。

エメラルド、サファイア、ダイヤモンドによる、
圧倒的な美と輝きを散りばめるネックレス。

夢の世界へ導いてくださったヴァン クリーフ&アーペルに感謝。
心の奥深くに残る画期的展覧会です。

コレクションを堪能した後、会場を振り返ると、中央の何もない暗い部分は鉱山で、
そこから発掘されたダイヤモンドが、人の才知で素晴らしいジュエリーになったことを、
鉱山を取り囲みながら喜び合っているように、ふと、思えました。

2022年7月2日

カラフルで、自由な心になった日

 7月になった最初の日、つまり1日に「何かいいことないかな」とチュイルリー庭園に向かうと、まず、ラヴェンダーの香りが漂っているのに気づいた。もう、その季節かと思いながら近づいたら、爽やかな香りが全身を包んだようで、心地よい。紫の色合いも、小さな花が寄り添っている姿も品格がある。きっと南仏のラヴェンダー畑も紫一色になって、さぞかしきれいだろうと、目をつむるとその光景が、くっきりと瞼に浮かぶ。

それにしても、パリのど真ん中で、ラヴェンダーを見れるなんて 何てステキで幸せなことよ。

ラヴェンダーの香りが匂い立つ庭園の一角。

幸せを抱えながら、いつもの通り、マロニエの木々の下を通りながら、ゆっくり散策している人々を見るとはなしに見ていると、何やら左で不思議な引力を放っているように思える。それで、その方角に視線を向けると、芝生の上にカラフルな彫刻が置いてある。ジャン・デュビュッフェの作品だ。

たしか、この彫刻は、同じチュイルリー庭園の別の場所、あまり人が気が付かないちょっと高い所で見た覚えがある。それが、今度は、誰もが目にするマロニエの街路樹に囲まれた芝生の上に展示されている。説明があるので、近づくと「ベル・コスチュメ」と書いてある。「美しい衣装」と訳すことが出来る、1973年、とも書いてある。

ジャン・デュビュッフェの彫刻。
カラフルで自由な動きが視線をとらえます。

ジャン・デュビュッフェ(1901-1985)は、港町ル・アーヴルで生まれた画家であり彫刻家。大きな特徴は、従来の絵具ではなく、砂やジャリ、あるいは石膏などと混ぜた分厚い絵具を用いること。彼の作品は「アール・ブリュット」と呼ばれる。加工せず、生のままとか自然のままのアートという意味。

この作品を見ていると、束縛から解放された自由が感じられて楽しい。それは、作者が望んだことらしい。フランスの三色旗の色と、黒いラインでいくつかに分けられている4mもの高さの、立っている人間の姿です。