2023年5月30日

辻仁成さん、オランピア劇場でコンサート

 辻仁成さんから、オランピア劇場でコンサートをすると連絡を受けたのは、昨年秋。コンサートの日まで半年以上ありましたが、すぐに5月29日の夜をブロック。

パリの随所で見かけたコンサートのポスター

オランピア劇場とは、さすが、ヒトナリさん。ターゲットの規模が違う。様々な分野に挑戦をする勇気、情熱、目標を達成するための努力は目を見張るほど。スリムで小柄で、おとなしそうに見えるヒトナリさんの外見からは、想像できないほどのエネルギーを、きっと奥深くに持っているのでしょう。

彼はギターを手に歌っているときが、一番幸せそう。今回も情熱の全てをかけて歌うに違いないと、大きな期待を抱きながら、コンサートの当日は早めに劇場に到着。劇場の入り口の上には大きく「TSUJI」と、赤いネオンが灯された文字があり、一瞬、同じ日本人として感激で身が震えたほど。

オランピア劇場のTSUJIの大きな文字。遠くからも目立ちます。

厳重な警戒。荷物検査もあり、いかに重要なコンサートか分かります。

中に入ると、オランピア劇場でコンサートをする
アーティストのポスターがずらり。

開演を待つ間も期待で心が躍ります。

世界中の歌手が憧れるシャンソンの殿堂オランピア劇場で、日本語、フランス語で歌う彼の幅広いレパトリ―の歌声は、この日、高らかに響き渡り、感動の連続。特に、「荒城の月」には涙をおさえ切れませんでした。かつて誇っていた平和と栄華が消え去ってしまったという「荒城の月」の歌詞と、哀愁をおびた曲が絡み合い、ウクライナの破壊された悲惨な光景が浮かび、心を打たれないではいなかったのです。

2時間に及ぶノンストップのヒトナリさんの熱唱は、劇場を興奮の渦に巻き込み、やまない拍手にこたえて、アンコール曲も2曲。素晴らしく、忘れ難いコンサートでした。ブラヴォー、メルシー!!!

長年お会いしていなかった友人に再会したのも楽しかった。


コンサートが始まる前に画家黒田アキさんに再会。
コロナのために4年ぶりくらい。
「お互いに変わっていないね」と楽しい会話。
アキさんが被っている帽子は、彼が自分で絵を描いたそう。
写真を撮ればよかったと、いまさら後悔。ああ、残念!!

コシノジュンコさんにもお会いできて幸せ。
この日のために日本からいらしたのです。
ジュンコさんとは共通の友人だった高田賢三さんが話題。
「ケンちゃんがいなくなって寂しいね」
「あっと言うに旅立ってしまったわネ」

辻仁成さんの歌唱力は、二人そろって絶賛。
「オランピア劇場だから、力の入れ方がそれだけ大きかったんでしょうね」
と意見も一致。

世界に名を轟かせるジュンコさん。ステキで個性的な服装で注目を浴びていました。

2023年5月17日

カンヌ国際映画祭

76回目のカンヌ国際映画祭が5月16日に開幕し、27日まで続きます。この映画祭はフランス政府が力を入れている重要なイヴェント。通常テレビでニュースを担当しているジャーナリストも、著名なスターの特別インタヴューのために、カンヌに行くほど重きを置いている。もちろん期間中、ニュースの最後に特別報道があるので、華やぎが画面を通して伝わってきて、この時間がとても楽しみ。

カンヌ国際映画祭のロゴ

最近はあまり話題作がないフランス。でも、映画には誰にも負けない強い情熱を抱いています。と言うのも、映画が生まれたのはフランスなのだから。

19世紀末、リヨンのリュミエール兄弟が、写真館を経営する父によってシネマトグラフと名付けられた機械を発明。それは、動きを機械に収めて画面に映し出すという、画期的なもの。何度が試作品を作り、パリのオペラ座近くのグラン・カフェの地下で初めて公に映画を上演したのが。1895年12月28日。当然、大きな驚きと反響を呼びました。

映画の生みの親、リュミエール兄弟。
カンヌ国際映画祭の会場フェスティヴァル・パレスの
セレモニーや上映を行うメイン会場に、リュミエールの名を冠しています。

このように映画の発祥地であるフランスは、政府が国際映画祭を開催することにし、その場所として選ばれたのが、カンヌ、1946年のことでした。それ以降、世界各国からセレクトされた作品はもちろん、監督、出演者が毎年カンヌの集まり、街中が賑わいます。

私もこの映画祭に数回招待されましたが、あの雰囲気はかなり特殊。何しろスクリーンの花形スターが集まるのだから、その姿をひと目見ようとすごい人数のファンが押し寄せ、歓声がひっきりなしにあがるし、公式許可を得た500人近いカメラマンもタキシード姿でひしめき合っている。白い浜辺にはいくつものテントが張られ、そこで食事をしたり、夜はダンスを楽しむ。地中海の水は青く、遠くには無数のヨットがゆったりと浮かんでいる。海岸沿いには白亜の高級ホテルが並び、手入れが行き届いた街路樹が微風に葉を揺らせている。ときには高台の広大な敷地内(多分裕福な人の別荘)でパーティーがあり、打ち解けたスターたちと一緒に歌ったり踊ったりもあります。

一度、こんなこともありました。ある日、裏通りの和食レストランでランチをいただいていたら、日本人のマダムが近寄ってきて、
「コッポラ監督が毎日のように来るのよ。明日もいらっしゃるから、同じテーブルにしてあげましょうか?」
あまりのことにびっくりして、うわずった声で
「ぜひお願いします」
と頼み、翌日、約束通りあの偉大な監督と向かい合ってのお食事。お隣には優しい笑顔の夫人が座っていて、デザートのときに、何とコッポラ監督が私に話しかけたのです。
「デザートを食べる権利があると思いますか?」
と、ちょっと大きめなお腹をさすりながら言う。
夫人の顔を見ると、にこにこ笑っているだけ。
その柔和な顔に勇気を得て
「映画の祭典の間だから、許されるのでは」
と答えて、3人でデザートをいただいた夢のような出来事もありました。

忘れがたい思い出ばかりの映画祭。

カンヌ映画祭には、こうした裏話がいっぱいある本当に楽しい祭典。熱気に満ちた12日間。今年はどんな話題が飛び出すか、テレビを見ながら毎日ワクワクです。そういえば、今回の映画祭開幕宣言は、フランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーヴが担当。彼女はマイクを握るや否や、ウクライナ詩人の詩の一部を暗唱したのです。

私には、もはや幸せも自由もない。
私に残されたただ一つの望みは
美しいウクライナに戻ること・・・、

あまりにも感動したのか、肝心の開催宣言を忘れ、司会を務めていた娘の女優キアラ・マストロヤンニに催促され、慌てて宣言するというエピソードがありました。会場にいたスターや監督もさぞかしびっくりしたでしょうが、こうした場でウクライナの悲劇を詩で訴えたことには大きな意義があり、会場に拍手を巻きおこしました。

1969年のカトリーヌ・ドヌーヴ。非の打ちどころがない美しい26歳
79歳になった今でも、フランスを代表する大女優の地位を確保。
シャイなところもあり(そのためかすごい早口)和食も大好きだし、園芸も愛する人。

2023年5月14日

ステキなコンセプトのブティック

 オペラ通りに面白いコンセプトのブティック誕生。ショーウインドーに楽しさがはじけているので、中に入ると、カラフルなアイテムがいっぱい。まるで宝物を隠している部屋にいるようで、あちこちに発見がある。好き勝手に展示しているといった感じが楽しい。

気になるので販売員に聞くと、毎週、異なる複数のクリエーターの作品を置いているそう。服、バッグ、アクセサリー、帽子、サングラス・・・・一点ものが多いから、個性を重んじる人には魅力的。

毎週変わるとなると、毎週見に行きたくなる。世の中どんどん変わっているのですね。振り落とされないように、世の動きにしっかりつかまっていなくては。とにかく、このお店はワクワクするアイテムばかりで、見ているだけで幸福度満点。来週も行こうと、固く決心した日でした。

新しいコンセプトのブティック Les Créat's

自転車に乗ったり旅行に最適なグッズ。

お洋服はどれも愛らしい。

たまには気分転換に着てみたいと思わせるドレスたち。

アイディア豊富なアクセサリー。本当に個性的。

バッグのチョイスも幅広い。
その場で決心しないとすぐに売れてしまう。

ひっきりなしにクライアントが入って来ます。
プライスも手ごろだし、日曜日も祭日も営業。

2023年5月12日

チャールズ3世戴冠式に熱狂したフランス

 5月6日のイギリス国王戴冠式の日、フランス人のイギリス王家に対する熱狂ぶりにまたまた驚きました。

テレビでの実況中継は、朝9時から午後3時半まで休むことなく続き、その間、司会のジャーナリストもゲストも、まったく疲れを見せることなく話し続けていたのです。ロンドンの複数の特派員による沿道に並ぶ人のインタヴューやショップの中継などの間に、コーヒーを飲んでいたとしても、すごいバイタリティ。長い式の間には、軽くランチもいただけたかしらと、それも気になって、気になって。

いつもながら、ゲストは自分の知識を披露したくて仕方なく、意見や解説が重なり合って聞きにくいことも度々。今は雑誌が競って特集を組んでいます。

国のために生涯奉仕すると宣誓した、優しい表情の国王。
雑誌は大特集し、しかも発売日を繰り上げる熱心さ。

イギリス王家の先祖は、フランスのノルマンディー公。1066年に血気盛んなノルマンディー公がイングランドを征服し、ウィリアム1世として即位したので、特別の愛着があるのでしょう。エリザベス2世はフランスが好きで、公式訪問をした外国はフランスがもっと多く、フランス語も流暢。チャールズ3世もフランス語をしっかり学びましたが、ウィリアム皇太子はその伝統を引き継いでいないとのこと。時代の変化を感じます。

私がもっとも興味を抱いているのは、チャールズ皇太子がカミラと結婚するまでの34年間、愛し続けたこと。お互いに結婚し子供がいるにもかかわらず、変わらぬ愛を注いでいたこと。カミラは、何という人生を歩んでいる女性でしょう。若い時代は窮屈な宮廷生活などイヤだと、23歳の皇太子のプロポーズを振り切って、貴族で軍人の男性と結婚し、二人の子供をもうけ、裕福で自由な生活を送っていたのです。その間も皇太子の愛を一身に受け続け、落ち着いた年齢に達したときに王妃になるなど、夢物語としか言いようがない。現実の出来事だとは、とても思えない。

2009年、カナダを訪問したお二人。

2019年、ロンドンでのレセプションに出席したエレガントな皇太子ご夫妻。

このような人生を送る女性は、おそらく今後もあらわれないと思う。カミラはよほど魅力的な女性なのでしょう。

カミラがチャールズ皇太子と結婚する前に、パリでのレセプションでお見かけしたことがありますが、背はさほど高くなく、ほっそりしていて、笑顔が飛び切りチャーミングで、オーラが放たれているのに圧倒されたのを覚えています。これでは皇太子が諦めきれないハズね、内面が輝いているから、あのような魅力を備えているのにちがいないわ、と友人とうっとりしながら話し合ったほどでした。

気取りがなく自然体のカミラ王妃は、今後、イギリス国民だけでなく、世界の人たちから親しまれることでしょう。それにしても彼女の顔が、30年以上前からあまり変わっていないのは、どうして? ヘアスタイルもほとんど同じ。やはり格別な女性なのですね。

2023年5月8日

オペラ座 修復工事開始

 1875年、シャルル・ガルニエによって建築されたパリのオペラ座の修復工事が始まり、いつもと異なる姿を見せています。工事は2024年初頭まで続くそうで、もちろん、この年に開催されるオリンピックを意識しての修復。

1923年に歴史的建造物に認定されたオペラ座は、多くのツーリストに愛される豪奢なモニュメント。何度か修復が行われたのですが、外観の汚れやひび割れをなおす必要があるとのこと。

素晴らしいのは、工事中でも美観を損なわないように工夫をしていること。通常、見苦しい足場も、まるでアート作品のように整然とした美しさを見せているし、両サイドの大きな目隠しのパネルも、見とれるほど華麗。エントランスにも横長のパネルが設置され、工事中とはいえ、このままでもいいほどパリの街並みに溶け込んでいるのです。

オペラ座の正面が工事中でも左横の入り口から中に入れるので、ネオバロック様式のゴージャスな階段も、数多くの彫刻、美しい天井画、煌めくシャンデリアも思う存分味わえます。

修復工事用の足場が組まれたオペラ座。
整然とした足場が見とれるほどキレイ。

数日後に様子を見に行ったら、両サイドに大きなパネルを貼り、
従来のオペラ座を部分的とはいえ見せていて、またまた見とれてしまう。
さすが、街の美観に特別に気を使うパリと感服。


中央にもパネルを貼ったにちがいないと、また数日後に行くと、
ナント、シャネルの大きな広告。
これは一時的で、この後、他のメゾンの広告に数回変わるそう。
オペラ通りの突き当りにあるからすごく目立つ。
広告料は莫大なはず。それは修復費用の一部になるのでしょう。

側面もおろそかにしていないのが立派。
左は実物の建物で、右がパネル。違いに気がつかないほど調和している。

そういえば、マドレーヌ教会が修復中だった時にも、同じように、ディオールやシャネル、グッチなど大手の広告が正面を飾っていた。それも絵になっていて違和感を感じなかったから不思議。何でも美しく見えるのは、パリに魔法の力があるからなのかも。

コロナ以前はバレー鑑賞だけでなく、タキシードとロングドレス着用のガラ・ディナーもあり、社交場にもなっていたオペラ座。一日も早く、パリならではの、あの典雅な時を取り戻してほしい。

何年か前にガラ・ディナーに招待されたときの写真。
現実とは思えないほど華やかでした。
あのときの高揚感をいつかまた味わいたい。

2023年5月3日

マロニエの花咲く季節

 5月になってマロニエの花がキレイに咲いています。これを見るといよいよ春になったかと、心が躍ります。小さい花が寄り添いながら、空に向かってのびている姿に、いつも活力をもらっている感じ。だから、たくさんのマロニエに会いにあちこち歩き回る。

この時期は他の花々も満開で、どこもかしこも幸せが飛び跳ねている。お散歩に最適な時期なので、外を歩くのが楽しくて仕方ない。お花に誘われて今日もスニーカーで一時間ほど歩き、気分爽快。

背が高いマロニエの間にいると、森に中にいる錯覚をおこすほど。

小さい花が寄り添っているのが愛らしい。

色鮮やかなチューリップも満開。

公園内のレストランも大繁盛。緑に包まれてのお料理は一味違う。

広々した芝生の上で、どのお花も幸せそうに、可憐な姿を見せています。

思い切り走りたいのに、公園内は禁止だってサ。
だからバッグに入ってのお散歩。不満だワ~ン。

住まいの池が工事中。だから芝生の上で暮らしているボクたち。
工事の進み具合を監視できるように、近くにいるんだよ。
夏までに完成するといいな~。ワイワイグァグァ・・・

2023年5月1日

バリケードがいっぱいの5月1日

年金制度改革で荒れているフランス。5月1日のメーデーには、歴史的大規模なデモを実施すると労働組合の発表があったからには、その被害にあわないように、それぞれが対処しなければならない。

もちろん、警察や機動隊も出動するけれど、すべてを守るのは不可能。というわけで、銀行もブティックも頑丈なバリケードをはりめぐらしている。本来は、この日は「スズラン祭」の日。この日だけ、誰でも、どこでも、スズランを売っていいことになっているので、スズラン売りの姿をあちこちで見かけるのに、今年はそれどころではない。

通常、見られないメーデーです。

手元にあるべニア板を打ち付けて、
急遽、防御体制を整えたといった感じの銀行。
これで大丈夫かしら?

華やかな装飾に似合わない、ご覧の通り頑丈な守り体制。
お金に余裕があるブティックならではの、整然と居並ぶ鉄柵。


ベニヤ板に番号をふっているのは、次回のために保存しておくつもりかしら?
デモが多い国だから万が一に備えるのは賢明。

スズラン売りが街角に立っているけれど、
ほとんどの人が素通り。