2023年6月20日

マリー・アントワネット 一色に染まった日

マリー・アントワネットが王妃の公式な役割りから解放され、自分を取り戻す貴重なひとときを過ごしていたプライベート・ルームが、ヴェルサイユ宮殿内にありました。長年、修復工事が行われていましたが、ついに全てが完成。そのオープニングにナンと招待されたのです。ヴェルサイユ宮殿から連絡を受けた時は、うれしくて、うれしくて、その日は一日中ソワソワ。何しろマリー・アントワネットお気に入りの「村里」でビュッフェもあるというのだから。もちろんカレンダーに大きな赤丸をつけました。

王妃のプライベート・ルームは、一般に公開されている絢爛豪華な部屋の裏手にあり、「王妃の寝室」のベッドの左手から入ります。「黄金の間」「午睡の間」「図書室」「ダイニングルーム」「ビリヤードの間」など、どの部屋もマリー・アントワネットの好みで装飾されていて、彼女の高尚な美意識にうっとりさせられます。

プライベート・ルームがある内殿には、
この「王妃の寝室」の小さいドアから入ります。
マリー・アントワネットの飛びぬけた美意識に圧倒される、
究極のエレガンスが息づく「午睡の間」

二間続きの図書室。

サロンとして使用されていた「黄金の間」
お気に入りの貴族夫人たちとの楽しいひとときを過ごしていた王妃。
「ビリヤードの間」ルイ14世の時代からビリヤードは
王家の人々が好むゲームで、毎日楽しんでいたそう。
王妃のバスタブ。
銅製で、女官たちが何回かに分けてお湯を運んでいました。
蛇口は当時からあったそうで、びっくり。
今回見せていただいた中で、私がもっとも貴重だと思ったのは、
このトランク。
王家の人々はいくつもあるシャトーに、季節にごとに移動していて、
その際、マリー・アントワネットのドレスを入れて運んでいたトランク。
彼女が皇太子妃だった時代のもの。今後修復する予定だそうだけれど、
当時の空気に触れられようで、この状態のままの方がいい。

内殿に入れるのは王妃の子供たちや、お気に入りの貴族夫人たち。礼儀作法の心配もなく、こじんまりとしたこうした部屋で、ハープを奏でたり、おしゃべりに花を咲かせたり、ときにはランチを楽しんだり。「モード大臣」と呼ばれていたローズ・ベルタンとドレスの打ち合わせをしていたのも、そこ。

貴重なプライベート・ルームを、ヴェルサイユ宮殿総監やディレクターらと共に、キュレーターの詳細に及ぶ説明を聞きながら訪問した後は、車で「村里」に移動。そこで立食ランチ。色彩豊かで飛び切りおいしい数多くのお料理が、まるで魔法のように次から次へと運ばれてくる。そのどれもキレイで、口に入れて形を崩すのが惜しいくらい

多くを学んで内殿見学の後、「村里」でランチ。

食べやすい大きさのお魚料理。このほか肉料理、
野菜料理も数種類。
デザートもいくつのあったけれど、カカオたっぷりのこのチョコが最高のおいしさ。

アペリティフに始まり、数種類のお料理とデザート、そしてコーヒ―タイムになったとき、予定にかなったサプライズが。「王妃の家」の前に広がる湖を小舟で一周したのです。これはマリー・アントワネットが特に好んでいたこと。希望者のみというので、何にでも興味を持つ私は、迷うことなく小舟に乗り込む。あまりにも古く、傷みが激しいような舟なので、怖がって乗りたがらない人が多かったけれど、二度とこんなお誘いはないと、私は大喜びで舟に。

ああ、何というステキな計らい。小舟にゆられながら見る「村里」も、周囲に広がる芝生も、そこを家族連れでゆったり歩く鳥たちも、雑草さえもポエティック。こんなチャンスは今後、絶対にない。人生を満喫した、6月のあるさわやかな気候の日でした。

「村里」にあるいくつもの建物の中で
一番大きな「王妃の家」の前に広がる人口湖。
小舟で一周できるなんて、想像もしていなかった。
小舟から見る「王妃の家」。

二度と経験できないかと思うと、この写真はとっても貴重。
大切にしなくては。

湖を一周した木製の小舟。
古くて、汚れていて、ギシギシ音がして、時々傾き、
それが18世紀にタイムスリップさせてくれました。