2024年10月13日

ボルゲーゼ美術館の傑作展

リニューアル工事のために1年間閉鎖されていたジャックマール=アンドレ美術館が、再オープンに伴い開催しているのは「ボルゲーゼ美術館の傑作展」。この美術館は、裕福な銀行家アンドレとその妻ジャックマールが建築させた19世紀の優美な大邸宅。芸術をこよなく愛し、多くのコレクションをしていた夫妻でした。特にイタリア・ルネッサンスに傾倒し、その時期の名作も数多く収集していた夫妻なので、今回の展覧会はお二人にふさわしい。

19世紀にアンドレとジャックマール夫妻が建築させた邸宅。
建物の手前には美しい庭園があります。

ローマにあるボルゲーゼ美術館はイタリア・ルネッサンスとバロックの作品が多く、しかもため息が出るほどの名作ばかり。美術館はもともと枢機卿スピキオーネ(スピオーネ)・ボルゲーゼ(1577-1633)の別邸として17世紀に建築されたもの。彼は教王パウルス5世の甥にあたる。ボルゲーゼ家は代々芸術家を庇護していて、そのお蔭で、多くの優秀なアーティストが生まれています。特にマルカントニオ4世・ボルゲーゼは破格の美術愛好家で、絵画や彫刻のコレクションは増える一方。彼はナポレオン支持者でもあった。その子供カミッロ・フィリッポ・ボルゲーゼがナポレオン1世皇帝の妹ポリーヌと結婚し、フランスと深い絆が生まれているのです。ボルゲーゼ美術館が国立美術館になったのは1903年で、イタリア・ルネッサンスとバロックの宝庫として多くの訪問者を迎えている。

17世紀に建築されたローマのボルゲーゼ家の別荘。
現在はボルゲーゼ美術館。

ナポレオン・ボナパルトの時代にボルゲーゼ家の多くの芸術作品がフランスに送られ、今でもルーヴル美術館で展示されているのがあるけれど、今回ジャックマール=アンドレ美術館で見られる40の作品は、傑作ぞろい。その上、すべて借りているだけ。来年1月5日以降はパリで鑑賞できない。それだけに貴重。

絶対に見逃したくない展覧会なので、平日のランチタイムだったらすいているかも、と期待していたけれど、とんでもない、すごい行列。ルネサンス発祥国イタリアの、当時の芸術性豊かな空気が会場いっぱいにみなぎっていて、誰もがそこに身を置く幸せに浸っている印象を受けました。

展示室はテーマによって8つに別かれている。

私が絶対に見たかった、
ラファエロ作の「一角獣を抱く貴婦人」。1506年頃の作品で、
レオナル・ド・ダヴィンチの「モナ・リザ」と類似点があるとされている。
裕福な貴族の女性ならではの風雅な服装、豪華なジュエリー、
落ち着きある態度、冷静な視線。静謐な美しさがあり、ただじっと見ていたい。

ボッティチェリの
「聖母子、若い洗礼者ヨハネと6人の天使」
珍しい円形の作品で思い切った試みとされている。

「レダと白鳥」
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品に基づいた絵で、
彼が手掛けたオリジナルは紛失したが、
それに最も忠実に描かれた最も古い作品。

ギリシャ神話の全能の神ゼウスが白鳥に変身し、
スパルタ王の妻レダを誘惑し、
2人の間に子供が生まれた物語がテーマ。

カラヴァッジョの「果物籠を持つ少年」1596年頃の油絵。
ボルゲーゼ枢機卿がコレクションを始めた初期に購入。
カラヴァッジョは光と影の明暗をはっきり区別する技法で、
ドラマティックな絵を描いていたが、彼の人生そのものも劇的だった。

ヴェロネーゼの「洗礼者ヨハネの予言」
1566-1570頃の油絵。
中央に描かれた洗礼者ヨハネによって、
右側の3人のレビ人と左端の救世主キリストが分かれている。
ヴェネツィアの教会からボルゲーゼ家に寄贈された作品。

ルーベンス作「スザンナと長老たち」
貞淑な妻スザンナが水浴びしている時、
老人たちに言い寄られている場面が描かれていて、
スザンナの躍動感がある姿に迫力がある。
展覧会会場はこの豪奢な階段を上った2階奥。
ぜひもう一度行きたい。