2024年11月16日

クリストフルの高貴な輝き

 フランスが誇るシルバーウエアの老舗クリストフルの製品には、不思議なパワーが秘められている。それを、たった一点でも手にすると、自分が高尚な人になったような想いをいだかせるから不思議。現在、パリ装飾美術館で開催されている展覧会は、1830年のクリストフル創立以来の稀有な品ばかりで、その一点一点から放たれる高貴な輝きに圧倒される。

クリストフル創立者、シャルル・クリストフル
1805-1863

クリストフルの画期的な飛躍は、1844年に始まった。この年から金銀の電子メッキの技術を導入した製品を手がけるようになったのです。それ以前の銀製品は純銀で、高価過ぎ、裕福な王侯貴族のみが手に出来る超高級品で、高嶺の花だった。それが、メッキ技術のお蔭で、一般の人も買えるプライスとなり、世界に大きく羽ばたく製品となったのです。

今回の展覧会には創立時代から現代にいたる製品、デッサン、絵など展示作品は約600点にも及ぶ大規模なもの。特に見応えがあるのは、変化に富んだテーブルセッティング。フランスが世界に誇るアール・ドゥ・ヴィーヴルを堪能できます。その他、家具、オブジェ、彫刻、アクセサリーなど多岐にわたる作品が展示されていて、このメゾンの素晴らしさに魅了されます。

1860年代の豪華なテーブル・セッテイング。
クリストフルのゴージャスな燭台、センターピース、カラトリー。
グラスはバカラで、食器はセーヴル焼き。

1935年に建造されたフランス豪華客船ノルマンディー号の
ファーストクラスのダイニングルーム。
45000点ものカラトリ―すべてがクリストフル。

1883年に誕生し1930年代まで走行していた、
パリとイスタンブールを繋ぐ、オリエント急行の6日間の旅は憧れの的でした。
そのダイニング車で使用するクリストフルのカラトリ―は、
洗練を極めたインテリア、窓の外に見える風景と相まって、
忘れ得ぬ思い出を届けていました。

セーヴル焼きとクリストフルが華麗なハーモニ―を生んでいます。
1856年ー1857年作

「ルイ16世」様式風のテーブル。
1784年にマリー・アントワネットのために製作したテーブルを
ナポレオン3世皇帝の妃ウジェニ―が購入し、
それを多少アレンジし1871年のロンドン万博に出展した作品。

「ルイ14世」様式のティーセット。1855年作

若い日本の女性と男性の彫刻。1875年作。
1878年のパリ万博に出展。
顔の表情も着物も驚くほどの観察力と技術。
銀、金、銅を使用。
日本が万博に初めて出展したのは、1867年の第2回パリ万博。

1873年作の豪華な置時計。
日本、中国の七宝焼きとクリストフルの組み合わせが独走的。

コンテンポラリーな作品やアクセサリーも人気。

エリゼ宮や主だった省の晩餐会では、
この19世紀末の
クリストフルのシルバーウエアは現在も使用。

パリ装飾美術館での展覧会は2025年4月20日まで開催。フランス人がこだわる食卓アートをこの機会に味わってください。