2012年6月19日

シャネルがあこがれた女性

ミシア、ボナール作
その女性は艶やかな美貌の持ち主でした。
その女性は卓越したピアニストでした。
その女性は幅広い人脈と破格の財に恵まれていたために、多くの芸術家のメセナとして支援を惜しみませんでした。
その女性は愛され、あがめられ、
社交界の女王と呼ばれていました。
その女性を取り囲んでいたのは、まばゆいばかりに輝かしい人ばかり、ピカソ、コクトー、ルノワール、ロートレック、ストラヴィンスキー・・・

デザイナーとして活躍を始めたココ・シャネルは、そうした稀有な女性ミシア・セールに強い憧れをいだき、いつの日か自分もミシアのようになりたいと思っていたのです。

もしもシャネルがミシアに出会わなかったら、彼女は今日まで語り続けられるフランスを代表する女性にならなかったと思われるほど、ミシアのシャネルへの影響は強かったのです。

ミシア、ロートレック作
シャネルが最愛のカペルを事故で失い、打ちひしがれていたときに手を差し伸べ、未来への明るい希望を持たせるようにしたのもミシア。
名な人物との交流を持てるようになったのもミシアのお陰。
ふたりの女性は30年間という長い間友情を持ちましたが、どちらも激しい気性で、時にはライバルになったりで、お互いに心底からの信頼を持つことはなかったようです。

ポーランドの彫刻家とベルギー人母の間に生まれたミシアは、フランツ・リストなど著名人と交際があったベルギーに住む祖母に育てられ、
10才になったころにパリの聖心修道院の寄宿生になったと
記録は語っています。

ミシア、ルノアール作
三回結婚したミシアはそのたびに美しさと教養に磨きがかかり、財も増え、三番目の夫、スペインの画家ホセ・マリア・セルト(フランスではセール)の時代に人生最大の花を咲かせました。

詩人は彼女のために詩を書き、作曲家は曲を捧げ、画家は競ってミシアをモデルにし、その数々の作品が、今、オルセイ美術館で展示中。ミシア・セールという女性がいかなる人だったか、巨匠たちの絵で知る絶好の機会です。


「ミシア、パリの女王」
オルセイ美術館
2012年9月9日まで