2016年2月14日

マリー・アントワネット 絵で辿る生涯 57

家族に死刑の判決を告げる国王。
裁判がおこなわれている間、王は家族に会うことを許されていませんでした。彼に家族に会う許可が出たのは1793年1月20日夜、最後の別れを告げるためでした。

王妃、子供たち、王妹が、揃って階下のルイ16世の部屋に入って行きます。王の口から判決が告げられると、一挙に叫び声が響きました。
一国の王ともあろう人が、国民によって裁かれ、処刑される。予想を絶するこの決定を、

どう受け止めればいいのだろうか。

誰の口からも言葉は発せられなかった。身の置き場がないほどの悲しみや怒りが、言葉を奪っていたのです。

声にならない嗚咽が長い間続いていました。
その嗚咽は厚い壁にぶつかり、行き場がないように彷徨っていました。それがあまりにも悲惨で、隣室にいた看守もいたたまれないほどでした。

あまりにも過酷な運命に
誰もが言葉を失っていました。
永遠の別れを前に、ときは無残に経っていきます。

王妃たちはいつまでも王から離れたくなかった。
出来ればこの最後の夜を、王と共に過ごしたいと切望したに違いない。誰にとっても一秒一秒が貴重だったのです。
一向に部屋から動こうとしない家族の顔を、国王は記憶に刻むかのようにしっかり目にし、明日の朝に再び会いましょうと言葉をかけます。

けれども、そのとき彼は決意していたのです。このつらい思いを繰り返したくないから、明日は誰にも会わず、最後の祈りを捧げて処刑場に向おう、と。

1月21日の朝、塔を出て行く王を見送ったのは、侍従のクレリーだけでした。
悲痛な永遠の別れ。