2017年5月4日

フランス大統領選 4  最終テレビ討論

5月3日夜、7日に控えている決戦投票前の最後のテレビ討論がありました。

今回は右翼、左翼の2大政党代表ではなく、中道・独立派の39歳のエマニュエル・マクロンと、48歳の極右翼・国民戦線のマリーヌ・ルペンの対決。有権者は正直言ってどちらに投票すべきか迷っている人が多い。それだけにこのテレビ討論が重要視されている。


21時、マクロンとルペン、そして司会のふたりのジャーナリストがすでに席についている場面がテレビ画面に映し出される。

室温18~20度、14台のカメラが取り囲み緊張した空気が流れる中、質問が開始され、まずルペンが言葉を発する。
当初からマクロンを辛らつに非難したり、中傷的な、時には侮辱的な言葉を攻撃的に連発。
マクロンはそれにすこしもひるまず、ルペンの矛盾を指摘したり具体的な政策案がないこと、彼女が語ることは嘘ばかりだと数回に渡って発言。

司会者がいないかのように二人の激しい討論は続き、いつものように声が重なり、それぞれの主張が聞き取れないことも度々。

テーブルを挟んで向かい合っての討論の間、相手の厳しい視線と言葉を目の前で浴びながら、ふたり揃って少しの躊躇も戸惑いも見せない。
ルペンがテーブル上に書類を広げ、ときどきそれを見ながら発言したのに対し、マクロンは何も見ずに流暢に具体的に語るこの違いが印象的でした。

マクロンが提唱することは野蛮なグローバリゼーションだと何度も繰り返すルペン。国民の怒りを利用するあなたの態度そのものが極めて危険だと応酬するマクロン。

いまだかつてみたことがない非難に染まった約2時間30分続いた討論は、最初から最後まで熱気に包まれ、23時半に終わりました。
どちらが選出されるかは7日の投票日に判明しますが、この討論の後の統計によると、63%の視聴者がマクロンに説得力がありルペンは34%。1600万人がこのテレビ討論を見たそうです。

多くの支持者を得ているマクロンの公約のいくつかは・・・・

右派左派のそれぞれの利点を結集し、新しい政治を実施する。
政治家だけでなく一般市民も政治参加をさせる。
公務員を減らし出費を抑える。
法人税を減らし企業の負担を少なくする。
週の労働時間は35時間を維持。ただしそれぞれの企業内での交渉によって変更も可能。
失業者対策のひとつとして、専門の職業訓練を充実させる。
子供たちの将来のために学校教育に力を入れる。特に小学校の教育を重視し、1クラス12人の生徒で行き届いた教育を行う。
定年は62歳。
ヨーロッパの中に位置しているフランスは、EUに残留すべきである。他国との交易は国に必要なのであるから。
EUの方針を重んじ難民を受け入れる。それは我々の義務である。

無名の一青年から、後ろ盾もなく自分の力のみで最高峰にのぼったナポレオンと同じに、マクロンも3年前までは無名で、自らの力でここまでのぼった人。議員になった経験がない若い彼に、国の指導者になる器がないように思っている人も多いようですが、私はマクロンに全面的な信頼を置いています。

彼は大統領という名誉がほしいのではない。
多くの問題を抱え、経済も治安も何もかも悪化する一方の祖国を救いたいのです、改革したいのです。そのためには国の指導者になる必要がある。今こそ立ち上がらなければならない。ただし自由な立場で。
その信念を貫くために、どの政党にも所属せず自ら政治運動「前進」を創設させたのが2016年4月。数人の支持者だった「前進」は短期間でフランス中に旋風を起こし、今では25万人の支持者を持つまでになったのです。

マクロンが大統領に選ばれれば、彼が力説している「革命」 がフランスを生まれ変わらせるのです。
私はそれに大きな期待を抱いています。