2018年10月29日

パリの犬たち 184

世界は広いワン

あっ、この人あまり見かけない顔している。
どう見てもヨーロッパの人じゃないワン。
もっと近くに行って、バッチリ観察しよう。
ウ~ン、アフリカの人でもないし、南アメリカの人でもない。
かといって、アメリカ合衆国の雰囲気もない。

ああ、そうか、アジアがある。
でも、アジアといってもたくさんの国があるんだよね。

いったいどこの国の人かなぁ。
お家に帰ってネットで調べよっと。
そのために、もっともっと詳しく観察しなくては。
じぃーッ、じぃーッ、じぃーッ、じぃーッ・・・・


2018年10月25日

メトロの駅名は語る 103

Michel-Ange・Molitor
ミケランジュ・モリトール(9、10号線)


イタリア・ルネッサンス期の偉大な彫刻家であり画家、建築家ミケランジェロと、18~19世紀を生きたフランスの軍人モリトールにちなんだ駅名。

ミケランジェロ(1475-1564)

ミケランジェロはレオナルド・ダ・ヴィンチのようにフランスに暮したことはありませんでしたが、ルーヴル美術館に展示してある二体の奴隷像が、フランスとのつながりを語っています。


「瀕死の奴隷」


「抵抗する奴隷」

ルーヴル美術館の「ミケランジェロ・ギャラリー」でひときわの光彩を放っている「瀕死の奴隷」と「抵抗する奴隷」は、教皇ユリウス2世のお墓のために制作を始めましたが、完成前に教皇が世を去ります。結局、教皇ユリウス2世のお墓にはミケランジェロ作のモーセの像が飾られます。未完成の二体の奴隷像は、ミケランジェロの友人でフランスのリヨンに亡命していたロベルト・ストロッツィ男爵にプレゼントされました。

パリの北郊外の美しいルネッサンス様式の
モンモランシ―元帥のシャトー。
シャトーの正面を飾っていた奴隷像。

ストロッツィ男爵はルネッサンスに傾倒していた当時のフランス国王フランソワ1世に、奴隷像を献上。その息子アンリ2世がモンモランシ―元帥に寄贈し、彼のルネッサンス様式の美しいエクアン城のファサードを飾っていました。

ルーヴル美術館でひときわの輝きを放っている
「抵抗する奴隷」と「瀕死の奴隷」

二体の奴隷像の旅はその後も続き、1632年、モンモランシ―元帥からリシュリュー枢機卿の手に渡り、枢機卿のパリ近郊のシャトーに置かれていました。それが枢機卿のパリ中心の広大な館、現在のパレ・ロワイヤルに移され、1792年、フランス革命の際に没収され、ルーヴル美術館に展示されることになったのです。

ガブリエル・モリトール(1770-1849)

モリトールはフランス革命最中の1791年に軍人としての活躍を始め、革命を非難したオーストリア軍相手のライン地方での戦闘で目覚ましい業績をあげます。

ナポレオン時代にはイタリア遠征に参加し、1806年、現在のクロアチアのダルマチア地方にあったラグサ共和国征服に大々的に貢献。1807年にはバルト海で勢力をふるっていたスウェーデン軍に打撃を与えます。

いくつもの輝かしい業績を残したモリトール。
ナポレオンが流刑されていたエルバ島から脱出し、フランスに帰還した後の戦いでも秀でた軍人の輝きを発揮。

その後ルイ・フィリップの立憲君主制の時代にも活躍をし、アンヴァリッド総督になります。その名誉ある地位をナポレオンの弟、ジェローム・ボナパルトに譲り、ナポレオン皇帝が創設したレジョン・ドヌール賞勲局総裁の役職に就いたのでした。

19世紀半ばのレジョン・ドヌール宮。

79歳の起伏に富んだ人生をパリで終えた元帥モリトールは、アンヴァリッドに葬られました。

2018年10月22日

パリで楽しむ日本のお祭り

「ジャポニズム 2018」の一環として、地方の魅力を紹介するイヴェントがいくつかありますが、その中で見逃したくなかったのがお祭り。

「グラン・マツリ」と呼ばれる祭典は、ブローニュの森の中にあるアクリマタシオン公園で開催。ウイークエンドの3日間のみ。そのハイライトは21日の青森県のねぶた祭りの人気者、五所川原ねぶた。11メートルの高さの山車は夕刻7時にイルミネーションが灯され、公園内を練り歩くと知って、その前に到着し30分ずつ並んでたこ焼きとたい焼きをいただいて、すっかりお祭気分。そう、鳥のから揚げもいただきました。

夕方7時ころ五所川原が誇る縦長の山車に
灯りがともった瞬間、歓声があがりスマホが一斉に活躍。
デザインも色も迫力があり、
フランス人の感性を刺激したことでしょう。
「ヤッテマレ」の大合唱の中、行進です。
時々向きを変えるので様々な面を見れたのがとてもよかった。
お祭に欠かせない赤い提灯も随所にあります。
徐々に隣接するルイ・ヴィトン財団美術家に近づきます。
華やかな姿をガラス張りのルイ・ヴィトン財団美術館の壁面に映して、
山車のパレードが終了。

カラフルでインパクトある五所川原ねぶたは想像以上に素晴らしく、行進の最期までついて行きました。楽しい楽しいお祭。毎年開催してほしいほどです。

2018年10月19日

ジオ・ポンティへのオマ―ジュ展

イタリアの建築家であり家具デザイナー、ジオ・ポンティの代表的作品を装飾芸術美術館で展示中。

ジオ・ポンティ(1891-1979)

一般公開前にゆっくり鑑賞できたのは幸いでした。
「イタリア建築・デザインの父」と呼ばれるポンティの作品の中から、400点以上選んで展示しているのですから、長い行列ができるのは明らか。

展示作品は多岐にわたり、しかも展示方法がずば抜けて素晴らしい。それ自体が高度の芸術。巨匠にふさわしい展覧会です。

ユーモアあふれるステンドグラス。

自由が漲るフォルムのガラス作品。
アート性高いセラミックの作品。圧倒されるオリジナリティ。
心が洗われるほどピュアな家具。
洗練を極めた椅子が特に気に入りました。

ローマ帝国を築いた時代の歴史が感じられます。
優雅なコンソールテーブル。
我が家にもぜひ欲しい。でも、資金的に無理。

まるで奥行きがある部屋にいるような思いを抱かせる、
写真パネルを生かした知的でアーティスティックな演出。
爽やかなブルーの世界へといざなうインテリア。
奥の写真と手前の家具のハーモニーが素晴しい。

どれもこれも卓越した作品ばかり。
イタリア人の秀でた感性が精神に豊かさを与えてくれるはず。

建造物の精巧な模型も数点あります。

2019年2月19日まで開催しているので、数回行くつもり。
優れた感性が漂う世界にまた浸りたいから。

2018年10月18日

メトロの駅名は語る 102

Exelmans
エグゼルマン(9号線)

ナポレオンの時世の軍人エグゼルマンを称える駅名。

レミー=イジドール・エグゼルマン元帥(1775-1852)

エグゼルマンが目立った活躍をし始めたのは若干16歳で、その後多くの業績を称えられ数々の勲章と伯爵の称号も得ます。

ヴェルティンゲンの戦いのエグゼルマン。

特に目覚ましい活躍をしたのは、バイエルンのヴェルティンゲンでの対オーストリアの戦い。1805年10月8日、フランス軍がこの戦いで大勝利を得て、ナポレオンの戦史に名を残します。

モスクワ遠征、ワーテルローの戦いでも、エグゼルマンは皇帝とその軍に徹底的に忠実で、ナポレオン失脚後もボナパルト家とのコンタクトを絶やすことがありませんでした。

ナポレオンの甥、ルイ・ナポレオンが大統領になると、エリゼ宮に度々姿を見せるようになります。エグゼルマンは重要な相談役だったのです。

落馬が原因で76歳で生涯を閉じたときには、ナポレオン大統領列席のもとに、アンヴァリッドで葬儀が行われました。そこにはエグゼルマンが生涯忠誠を誓っていた、ナポレオン皇帝が眠っていたからです。

17世紀から続く由緒ある貴族令嬢と結婚したエグゼルマンは、10人もの子供に恵まれ、私生活は幸せそのものでした。

2018年10月16日

ユネスコ本部で「日本へのクリエイティヴな旅展」

パリのユネスコ本部での「日本へのクリエイティヴな旅展」は、日本への関心、理解を確実に高め、その効果があって日本への旅行者が増えているようです。今年その3回目を迎えテ―マは食文化とあって、さらなる興味を掻き立てています。

毎年、複数の地方都市を選んでそれぞれの歴史、文化、代表的産物などを分かりやすく紹介しますが、フランス人だけでなく、パリに滞在する外国人、あるいは日本人も学ぶべきことが多い展覧会です。

ユネスコ本部の展覧会入り口の雅な装飾。
ここから魅惑的な日本が始まります。

オープニング・セレモニー開始を告げる力強い和太鼓の演奏。
インパクトある剣道の実演。

オープニング・セレモニーは10月15日夕刻に行われ、和太鼓の勢い良い演奏で始まり、関係者のご挨拶、鏡開き、試食、試飲で熱気に包まれ大盛況でした。


この展覧会のために毎年パリにお出でになる
木曽元ユネスコ大使と陽子夫人、
そして友人の節子さんにお会い出来るのも大きな楽しみ。
日本を味わいながら会話が弾みます。

来年は私も和服にしようかしらと、
おふたりのお着物姿にうっとりしながら思いました。


トラディショナルなお茶室。

コンテンポラリーなお茶室。
にぎり寿司もあれば海苔巻きもある。
小舟の容器に日本情緒が感じられます。
埼玉県が誇る狭山茶。13世紀以前からの歴史があるそうです。
最高においしい。

沖縄県は種類豊富なお酒を紹介。
おかわりしたほどの美味。
日本一のクオリティの鹿児島県の和牛。
口の中でとけるほど柔らかく、牛肉の観念が変わってしまいます。
福島県はサムライと日本酒で有名。
鎧兜が由緒ある歴史を語ります。

関西を代表して大阪府が日本酒を紹介。

日本の食文化の深さとその継承が、いかに日本を世界に誇れる国にしているか実感しました。10月19日まで無料でユネスコで堪能できます。

2018年10月15日

パリの犬たち 183

区別がつかないだって

ワタシがとっても気に入ったドレスの下で、
ショッピング中のママンを待っていたら、
「あら、こんなところに犬が」
「エッ、犬? どこにも見えないけれど」
「ほら、このドレスの下よ」
「あ~らほんと。模様が似ているからわからなかった」

自尊心を深く傷つけられたワタシ。
だから、すくっと立ち上がって、全身を見せたの。
これならドレスとワタシの区別がつくでしょ、プンプン。


それにもかかわらず、
「あら、ますますそっくり」
だって。
もう早くお家に帰りたいワ~ン。

2018年10月14日

カルティエ現代美術財団 南米の作品で楽しさいっぱい。

悦びが飛び跳ねているようなカルティエ現代美術財団。南米のカラフルな作品が、一階と地下の展示会場で、競うように楽しさを散りばめているのです。その中に身を置くとラテン音楽が聞こえたり、南米特有の強烈な陽光に包まれているよう。

南米諸国のアーティストの幾何学様式の作品を展示しているのですが、独自の色彩感覚に圧倒されます。以前ヴァカンスで訪れたメキシコやキューバで体感した空気や、香辛料がきいたお料理、日焼けした笑顔、軽快なミュージックなどが一挙によみがえり、懐かしさがこみあげてきました。

ブラジルの女性画家の作品。
コロンビアのアーティストによる「ロイヤル・スケートリンク」
パラグアイのアーティストのお面。木彫に彩色しています。
ボリビアの「アンデス建築」の巨匠フレディ・ママニによる、
イヴェント・ホールの再現。

彼の生まれ故郷エルアルトの祭典ホールにいるようで、
異国情緒満点。音楽に乗って踊りたい気分。
ドミノを並べたユニークな作品。
上の作品のアップ。
カルフルな家々。

ほとんどの作品にタイトルがついていません。
それぞれ好きなように解釈してくださいという意図なのでしょう。

海の向こうの異国文化をパリで満喫できる貴重な展覧会です。
2019年2月24日まで開催。