2020年8月24日

トルコ、アヤソフィアがモスクに

 東西の文明が交差する魅力あふれるトルコのイスタンブール。その地でひときわの輝かしい歴史を誇っているのがアヤソフィア。ユネスコの世界遺産に登録されている世界の財産です。

東ローマ帝国(ビザンス帝国、ビザンティン帝国とも呼ばれる)時代の6世紀にキリスト教の大聖堂として建築され、その後15世紀のオスマン帝国時代にモスクに改造され、トルコ共和国誕生に伴い1934年から博物館になったアヤソフィア。地上55メートルの高さに君臨する直径33メートルもの巨大なドーム、色彩豊かな圧倒的に美しいモザイクは、世界中から集まる人々の感嘆を独り占めし、かつてのトルコの偉大さに驚愕しないではいられません。

イスラム教とキリスト教。
二つの異なる宗教と文化が共存するアヤソフィア。

アヤソフィアは二つの異なる宗教や文化が共存する唯一無二の建造物です。大きなアラビア文字が随所に見えるかと思うと、キリストや聖母マリアを描く見事なモザイク画もあります。15世紀に大聖堂からモスクに改築した際に、キリスト教に関するすべてのモザイク画を漆喰で覆って隠してしまったのです。けれども時が流れ、20世紀に大規模な修復作業がおこなわれ、その最中にビザンティン時代のモザイクが偶然に発掘されたのです。

修復作業の際に見つかったキリストを描いたモザイク画。
左は聖母マリア、右は洗礼者ヨハネ。
ビザンティン時代の傑作とされています。
聖母子像。
キリストに捧げものをする皇帝夫妻。

数世紀もの長い間ひと目に触れることがなかったモザイク画が、ある日突然姿を見せたとき、これこそビザンティン時代の傑作と世界は狂喜し、それ以降、細心の注意を払いながら保存し、現在も健在です。

けれども7月半ばにアヤソフィアはイスラム教のモスクとなり、金曜日に多数の人が集まる礼拝の日には、キリスト教に関するモザイク画が見えないように布で覆っているとのこと。今後、世界的財産がどのような運命を辿るか、多くの人が絶大な関心を抱いています。


博物館だった時代に訪れたアヤソフィアの外観。