2021年5月20日

安藤忠雄設計の最新美術館

5 月22日、安藤忠雄がリノーベーションを手がけた美術館がオープンします。昨年に完成していたのですが、ロックダウンのために、すべての美術館が閉鎖されていて、この日をずっと待っていたのです。

一般公開に先駆けて、19日から21日までの3日間、コロナで人数制限があるために招待客が分かれて訪問。私は19日午後2時の招待状でした。

フランス実業界の大御所フランソワ・ピノ―が、パリ中心にある歴史的建造物のブルス・ド・コメルス(商品取引所)を、自分のコレクションを展示する美術館にしたいと、安藤忠雄に改装を依頼。美術館は「ブルス・ド・コメルス=ピノ―・コレクション」と呼ばれます。

フランソワ・ピノ―はコンテンポラリー美術に造詣が深く、一万点もの作品を持つ、破格のコレクターとして世界に名を轟かせています。実業家としての腕は目を見張るほどで、サンローラン、グッチ、バランシアガ、ボッテガ・べネタ、ブシュロンなどを傘下にするグループの創立者。現在は息子フランソワ=アンリ・ピノ―があとを継ぎ、ケリングという名で多くのラグジュアリー製品を扱っています。

安藤忠雄とフランソワ・ピノ―のコラボレーションは、今回が初めてではありません。すでにベネチアのサンマルコ広場近くの歴史的建造物を、フランソワ・ピノ―のコレクションの一部を展示するために、安藤忠雄は美術館にしています。2009年でした。

1838年の商品取引所。当時はここで小麦の取引が行われていました。


パリの中央に建築された商品取引所は、19世紀の円形の建造物で、ドーム形屋根が大きな特徴。その下にコンクリートの円塔が建築され、そこに、フランソワ・ピノ―が50年かけて収集した、貴重なコンテンポラリー・アートの主要作品が展示されています。絵画、彫刻、写真など、世界中のアーティストの作品です。

美術館になった旧商品取引所。

美術館に入ってすぐに視線を捕えるドーム。
その真下に、天を衝くような力強い彫刻が展示されていて、
インパクトに圧倒されます。

右側の円筒の階段をのぼりながら、階上の展示室に向かいます。

円筒の階段の途中から下を見ると、美しい通路が見えます。

ドームの下に描かれた壁画は建築当時の貴重なもの。
重厚な歴史的建造物と清涼感ある現代建築が相まって、
特有のアンビアンスを放っています。

最上階の窓から、ポンピドゥーセンター、フォーラム・デ・アル、
17世紀のサン・トゥスタッシュ教会がくっきりと見え、
新旧の建造物が共存している、パリの優れた都市計画を再認識します。

展示会場は明るく広々としていて、
作品をじっくり鑑賞できます。

ドームの下に本物のハトがとまっているのかと思ったら、
これも飾りでした。このように驚きもある美術館。

彫刻も絵画も迫力満点。

過去、現在、未来が共存している魅力いっぱいの美術館です。展示作品は時をみて変えるそうなので、何度も訪れたくなります。