2021年9月24日

凱旋門 クリストのアートが消える前にもう一度

 クリストと妻ジャンヌ=クロードによる「梱包された凱旋門」が、もうじきその姿を消してしまう。そう思うと、日が経つに連れて切なさが増し、とても見に行かないではいられなない。というわけで、再び凱旋門へ向かう。

平日なので車が走っているけれど、制限速度は30キロのパリ。

初日とちがって車が走っているので、凱旋門に近づくために、シャンゼリゼから延びている地下道を通らなければならない。荷物検査と衛生パスのチェックの後、階段を降りて地下道に入る。これがまた美術館への通路かと思うほどステキ。


シャンゼリゼ大通りから凱旋門に向かう地下道。

地下道を通って凱旋門の真下に着くと、
巨大なアート作品が見える。
これが数日前までは、
彫刻を施した石造りのモニュメントだったとは想像も出来ない。


地下道をある程度進み、左に折れ、その後階段をのぼると、目の前に布に包まれた凱旋門がまじかに見える。感激の一瞬。遠方から白っぽく見えるポリプロピレンの布地が、ブルーがかったシルバーであることがわかるし、触ってみると軽くて柔軟性がある。

ひだを寄せ、赤いロープでしっかり固定した布は、結構やわらかい。
クリストは生前に、訪問者にぜひ触って欲しいと語っていたそうなので、
私も恐る恐る手で触れました。



「クリストとジャンヌ=クロード」と書いてあるチョッキを着たムッシューが、
ポリプロピレンの布を小さくカットしたサンプルを無料で配っている。



表はシルバー。


裏がブルー。


完全に布地に包まれた凱旋門は、従来の重厚なモニュメントの姿をすっかり消し、まるで、その下に集まる人々をやさしく包み、守っているように感じられる。アーチの向こうに見えるパリの建物さえも、以前と異なった趣を示しているようで、何もかも新鮮。

約60年前、クリストが青年時代に抱いていた夢がついに実現。
一見、カテドラルや神殿にも見える布に包まれた凱旋門。
その向こうの街並みまで変わったように思える。
ここに至るまでの数々の困難を乗り越えて、今、美しく感動的な芸術と化した凱旋門。
数日間で消え去る運命の刹那的なアートであるだけに、心に強く訴える。