2023年8月22日

チュイルリー公園の二つの不思議

 久しぶりに大好きなチュイルリー公園に行ったら、見かけない光景が二つ。

ひとつは、カモたちの規律正しい行進。一糸乱れず進んでいる光景は、艦隊のように見える。しかもどのカモも真剣な面持ちで、何だか緊張しているみたい。ヴァカンスの間に特訓していたのかと思うほど見事だし、キレイなので、しばらく見とれてしまったほど。

カモたちの整然とした美しい行進。まるで艦隊。

もうひとつは地面に埋められた銅板とおぼしき表示。今まで全く気がつかなかったけれど、2年前からあったらしい。銅板にそう書いてあるのだから確かなのでしょう。多くの人が歩く幅広い散歩道にあるし、土や砂で見にくかったのかも。かなり立派なので、近づいてそこに書いてある文字を見て、びっくり。

  ・・・ここに2021年2月8日にタイムカプセルを埋めた。
     ルーヴルとチュイルリーで働く人々が、
     未来のジェネレーションに宛てた多くのメッセージが入っている。
     このタイムカプセルが開けられるのは2061年8月11日。  
     それは、カトリーヌ・ドゥ・メディシスが 
     宮殿と庭園を建造させるために、
     チュイルリーのこの土地を購入して500年記念の日 にあたる・・・

ということが書かれている。ああ、何て気を持たせることよ。
それにしても気になるので、早速調べる。いろいろな資料を見ても、2061年ー500年、つまり1561年に、カトリーヌ・ドゥ・メディシスがチュイルリーの土地を買ったと、書いてない。とは言うものの、気になる以上、はっきりしないと睡眠不足になる。

埋められているタイムカプセル。
中に入っているのを見られるのは2061年8月11日と書いてある。

メインの散歩道の
コンコルド広場に近い場にあるタイムカプセル。
実際には砂や埃で見にくい。

そろそろあきらめようと思ったころ、やっと見つかった。「シャルル9世の時代のルーヴルとチュイルリーの連合」がまとめたの資料の中。そこに1561年8月11日にカトリーヌ・ドゥ・メディシスが、チュイルリーの土地を購入とはっきり記されている。しかも土地の4人の持ち主の名前まで書いてある。
当時の国王はカトリーヌの息子シャルル9世で、ルーヴル宮殿を居城としていた。その近くのチュイルリーに自分の宮殿を建築し暮らせば、10歳で即位した病弱の息子の摂政として、充分目を光らせると考えたらしい。シャルル9世が即位したのは、カトリーヌがチュイルリーの土地を買ったわずか3ヵ月前だったことから、彼女がいかにこの息子が心配だったかわかる。

カトリーヌ・ドゥ・メディシスが描いていたチュイルリー宮殿。
当時はカトリーヌ・ドゥ・メディシス宮殿と呼ばれていたそう。

ところが、宮殿建築が始まって間もないころ、
カトリーヌが全面的に信頼していた占い師が、
彼女はサン・ジェルマン近くで世を去ると言われ、工事を中止させます。
なぜならチュイルリーはサン・ジェルマン・ロクセロワ教会から遠くなかったから。

その後建築が再開され、完成したのはアンリ4世の時代で17世紀初期。
残念なことに1871年、パリコミューンで焼かれてしまったのです。
再建する案が出たこともあるけれど、その必要性もないとされ、実現していません。

幅広い散歩道にあって、砂や土でほとんど目立たないけれど、興味深いタイムカプセル。こうなると、他にも何か隠されているかもと、また公園に行きたくなる。お散歩ではなく、探検するために。
そう言えば、タイムカプセルがあるメインのお散歩道に、数年前に92本の楡の木を植えていたときに、革命前はこうだったと表示があった。何故、今ごろ革命前に戻すの?、何か意図があるに違いない。ウ~ン、ますます面白くなってきたチュイルリー公園ではないですか。