2023年9月23日

英国王チャールズ3世のフランス公式訪問

 チャールズ3世国王夫妻のフランス公式訪は、当初、3月末に予定されました。エリザベス2世女王崩御で国王に即位した後、最初の外国訪問に選ばれたのはフランスだと大喜びしたのもつかの間。年金改革反対の激しいデモとストライキで中止され、恥をかき、落胆したフランス。その時点ですでに9月頃にという案が出て、今度は大丈夫かと懸念されていたのが、無事に実現。

チャールズ3世国王

チャールズ3世はエリザベス2世と同じようにフランス愛好家で、皇太子時代の1969年から2022年までに34回も公式訪問。今回は35回目とはいえ、国王としては初めて。もちろんフランス語も流暢だし、文化・歴史にも精通。カミラ王妃も10代の時にフランスで数カ月学んでことがあるし、その後も度々訪問したそうで、お二人ともフランス語がお得意。

フランス人のイギリス王家に対する興味、熱意は驚異的で、何か事があるたびにテレビも新聞・雑誌も大特集を組みます。もっともイギリス王家の先祖がフランス人だという歴史的事実があるから、その気持ちもよくわかる。それに、世界に先駆けて革命で王政を廃止し、王侯貴族の豪奢な館を官庁関係が使用するようになり、旧体制の権威や華やかさを日々感じているのだから、その時代にノスタルジーを感じているのかもしれない。今回もテレビはゲストを招いて、国王夫妻のオルリー空港到着から密着報道。

2019年、皇太子と皇太子妃だった時代のお二人。
この時からあまり変わっていないように思えます。
お二人ともユーモアに長け、親しみやすいお人柄のようです。

マクロン大統領夫妻は凱旋門で国王夫妻を迎え、献花、閲兵後、シャンゼリゼ大通りを下りながらエリゼ宮へ向かい、そこで国王と大統領が会談。その夜、ヴェルサイユ宮殿の鏡の回廊で晩餐会。62mのテーブルが中央に置かれ、招待客は172人。フランスの政治家と財界人に加え、イギリスからヒュー・グラントやミック・ジャガーも招かれ、エリゼ宮所蔵の貴重な19世紀のセーヴル焼きの食器、バカラのグラスで美味を満喫。

気になったのはカミラ王妃がティアラを付けていなかったこと。ドイツを公式訪問した時の晩餐会では眩いティアラで輝いていたのに・・・でもドレスはディオール作のミッドナイトブルーで、シンプルでこの上なくエレガント。それに合わせたサファイアとダイヤモンドのネックレスとイヤリングはゴージャス。この晩餐会に招待された女性は、ほとんどが黒いロングドレス。やはり、この色に勝る優雅な夜会服はないのです。

共和国になってもフランスの象徴的存在の鏡の回廊。

翌日は修復工事中のノートルダム大聖堂、シテ島の花市訪問、上院でフランス語での演説。3日めはボルドーを訪問。12世紀から14世紀にかけて、この地域はイングランドの支配下にあり、住民もイングランド国王に忠実だったので、今でもフランスに暮らすイギリス人の43%がこの地域に暮らしているそう。

ブレグジットでギクシャクしていた英国とフランスの関係をより良くしようというのが、今回の訪問の目的のようで、マクロン大統領が頻繁にチャールズ国王の肩や背中に触れ、いかにも親しげ。晩餐会でカミラ王妃がティアラを被らなかったのも、親しさを示すためだったのかも。

それにしても、興味深いのはカミラ王妃が歩んできた類まれな人生。まるで小説のヒロインのよう。時と共にますますチャーミングになり、今後、彼女の運命が、人生が、どうなるのか気になって仕方ない。国王ご夫妻は気取らない気さくな性格で、ユーモアと柔和な微笑みでフランス人を一層魅了したようで、大成功の公式訪問でした。何だか急にロンドンに行きたくなりました。

英仏の空軍パイロットによるアクロバット飛行が、
英国国王夫妻の初のフランス公式訪問を高らかに祝っていました。

見るたびに感動するアクロバット飛行。
今回はイギリス、フランスがそれぞれ9機ずつなので、
今までにないインパクト。