2014年2月1日

ヴェルサイユ宮殿の庭園 新しい木立準備中


「水の劇場」の木立の建築現場
左から彫刻家オトニエル、
ヴェルサイユ宮殿総監カトリーヌ・ペガル、
造園家ベネック

ヴェルサイユ宮殿の庭園は典型的なフランス庭園で、幾何学様式がその大きな特徴。アンドレ・ル・ノートルの秀作です。
パリの中心にあるチュイルリー公園も彼によるもので、もともとはその地にあったチュイルリー宮殿の庭園でした。

フランス栄華の象徴ともいえるヴェルサイユ宮殿の庭園には、ルイ14世の時世にいくつもの木立が造られましたが、そのひとつ「水の劇場」の木立はルイ16世の時代に姿を消し、その後放置されていました。

ルイ14世の時代の「水の劇場」の木立


造園家ル・ノートル生誕400年記念の2013年に、彼によって造られた「水の劇場」を再現することが決定し、国際コンクールで
造園家ルイ・ベネックの案が採用され、それを飾るコンテンポラリーな彫刻は、フランスの現代美術作家ジャン=ミッシェル・オトニエルが担当することになりました。

オトニエルはパリのパレ・ロワイヤルのメトロの駅に、カラフルなガラスの球をつなぎ合わせた装飾をし、目を見張るばかりのユニークなその作品は人々を驚かせ、同時にパリに新しい顔を与えました。その後はディオールの限定香水「ジャドール アブソリュ」のボトルも製作した鬼才。フランスが誇るガラスを素材とする芸術作品の第一人者です。

本来は壊れやすいガラスが、彼の作品となると力強さがあふれ、ガラスの観念を変えてしまうほど。現代がひしひしと感じられる作品ばかりです。
オトニエルによるバロックと
コンテンポラリーの融合がある
斬新で典雅な彫刻
ルイ14世の象徴が、今、今世紀の清々しい息吹を受けて再生され、過去と現代の芸術の画期的な融合が生まれるのです。これは勇気ある試みです。今までも現代アートを宮殿内で展示したヴェルサイユ宮殿。でもそれは刹那的なものでした。が、今回のは庭園内に永遠に残る作品。それだけに期待も大きい。

芸術の新たな動きをヴェルサイユほどの重要な歴史建造物の中に見れるのは、刺激的ですばらしい。フランスならではの独特な企画です。
それを実現するフランスは、やはり文化国家。

「水の劇場」の完成は今年の秋に予定されています。バロックとモダンを取り入れた球が連なりながら描く彫刻と、それに絡まるように上がる噴水。周囲には多種多様の木々が植えられ、それがゴールドを中に抱えるムラノ製の透明ガラスの表面に反射する。想像するだけでワクワクします。

インスピレーションのひとつ
ルイ14世の時代のバレーのコレグラフィー
ルイ14世は祭典が好きな国王でした。
バレーが大好きな国王でした。
再生される「水の劇場」は国王へのオマージュでもあります。オトニエルはルイ14世のバレーのコレグラフィーからインスピレーションを得て、今回の作品を制作したとのこと。躍動感があり、夢があり、華麗で、完成が待ち遠しい。

「水の劇場」のプロジェクトを見せていただいた日は、雨上がりで、現場はまだブルトーザー大活躍の状態。幸いブーツだったから良かった。その後宮殿内に案内されて彫刻のお披露目とカクテル。冷え切った体が幸せに悦びの声をあげる瞬間です。

過去を過去のままにせず、新たな息吹を加えるこの素晴らしいアイディアに、皆、感服。
オープンが楽しみですね。ルイ14世の時代のように楽しい祭典があるといいのに、それに招待されるといいのに、と夢見ています。

完成予想図