2019年11月9日

靴の展覧会 古代から現代まで

リヴォリ通りの装飾芸術博物館で11月7日から靴の展覧会を開催しています。古代エジプトのサンダルからクリスチャン・ルブタンの非現実的な靴まで、様々な作品が展示されている中で、もっとも興味深いのはマリー・アントワネットの靴。

マリー・アントワネットが
チュイルリー宮殿で使用していた靴。

サイズが33であることが分かるような展示方法。
あまりにも小さくて驚きます。

1789年に革命が起き、ヴェルサイユ宮殿からパリに連行され、国王一家がチュイルリー宮殿に暮らしていた時代に、国民衛兵が王妃の部屋から盗んだ靴とされています。装飾がほとんどないシンプルな靴で、質素な生活を強いられていたからかとちょっと心が痛みます。

驚くことは靴のサイズが異常に小さいこと。サイズは何と33で長さ21 cm、幅5cm。マリー・アントワネットの時代の18世紀もそれに続くナポレオンの時代の19世紀も、高貴な女性はほとんど歩かなかったので、履き心地がいい靴というより、見た目に美しい靴が好まれていたのです。小さい靴はフェミニンで殿方たちにも称賛されていて、ほっそりした靴が履けるように布地で足をきつく縛るという努力も必要だったのです。いつの時代にも美しくなるのに努力は必要なようです。

ナポレオン皇帝の妃のための靴。
最初の妃ジョゼフィーヌか2番目の妃マリー・ルイズのかは、
判明していないそうですが、皇帝妃ご用達の職人作。
この時代も足が小さく見える靴が愛用されていました。
イギリス国王ジョージ5世王女メアリーの子供のための
プレゼント。ため息を誘うほど愛らしい。

日本の芸術的な駒下駄も注目の的だし、貴族男性たちの靴のバックルの豪華さも驚きで、これでは革命が起きるわけだと思いました。靴といえばイタリアですが、緻密な刺繍を施した靴はまさにアート。イタリア人の卓越した感性が伝わってきます。

江戸時代の駒下駄。

18世紀初期の貴族の優雅な靴。
宮廷の雅な香りが漂っているようです。
手前はイタリアの1630年作のエレガントな靴。

向こう隣は1660年作のルイ14世の弟フィリップ・ドルレアン公の靴。
このように、ルイ14世時代の高位の貴族はハイヒールを履いていたのです。
国王は威厳を保つためにハイヒールを愛用するようになったのですが、
好んでいたのは赤いハイヒールで輝くバックルがついていました。

男性貴族の象徴的存在だった豪華なバックル。

コンテンポラリーの作品も多く展示していますが、実用的というよりオブジェのような感じがほとんどで、靴にはこれほどの可能性があるのを示しているようです。

クリスチャン・ルブタンの発想がすごい。
火の鳥のように見え、今にも動きそう。

2020年2月23日まで開催。