22日のシャトレ劇場でのショーは、ゴルチエのキャリア50周年記念のもの。それが彼にとって格別な意味を持っていることは、容易に想像できる。だからコレクションも今までと異なる内容に違いない、と皆が大きな期待を抱いていた。それが、まさか、モードから身を引く最後のショーだと誰が想像できたでしょう。ファッション界の風雲児ゴルチエは当初から既成観念を打ち破り、独創的発想で絶え間なく世に刺激を与え、モードの幅広さ、奥深さを示してきた稀有な存在。その貴重なデザイナーが、今、モードの舞台からおりる。それはやはり大きな衝撃で、ファッションウィークの最大の話題でした。
67歳のゴルチエは、まだまだ現役でクリエーションを続けていける年齢。なのに、あえてこの年齢でモードをやめるからには、それなりの理由があるはず。それは明らかにしていないがゴルチエは、ファッションから引退するけれど、ブランド名「ゴルチエ パリ」は継続していくと宣言しています。つまりオートクチュールは異なるコンセプトで続くのです。
1月22日にモードから引退したゴルチエ。彼の決断の裏に何があるか・・・今のファッションに疑問を抱いているとか、自分の心が求めることはすべて実現したとか、若手のデザイナーに道をあけたいからとか、「ゴルチエ パリ」にフレッシュな息吹を吹き込み活性化したいのかも、あるいはキャリア50年を人生のひとつの節目と考えているのかも・・・新たな出発を遠くない日に発表すると約束したゴルチエ。チャレンジ精神旺盛なジャン=ポール・ゴルチエがこの年齢で完全に引退するはずがない。彼の情熱が何に向けられるか、一日も早く知りたい。
いずれにしても、華やかに、高らかにデザイナーに別れを告げられるゴルチエは幸せだといえます。なぜなら、様々な理由で自分が築いたメゾンから離れ、あるいは離れざるを得ず、その後世間から忘れられた存在になったデザイナーが少なくないからです。
シャトレ劇場での最後のショーは、イヴ・サンローランのポンピドゥーセンターにおける、ファイナルショーを彷彿させないではいませんでした。あの時は、感動があまりにも強く、涙を流した人が多かった。そういえば、何という偶然。イヴ・サンローランの最後のショーは2002年1月22日。ゴルチエの最後のショーも1月22日。これはもしかしたら単なる偶然ではなく、ゴルチエの意図だったのかも知れない。むしろ、そうだと確信しています。サンローランのショーにゴルチエが姿を見せていたこともあるし、彼の後継者にふさわしい才能を持つデザイナーはゴルチエのみ、と語られたこともある。ポンピドゥーセンターでのサンローラン最後のショーにも出席していた。何の前触れもなく突然引退宣言をして、衝撃を与えたのも同じだし、モードから身を引いたのはサンローランーは65歳、ゴルチエは67歳で年齢も近い。
ゴルチエ最後のショーが行われたシャトレ劇場。 |
ゴルチエは世界中から駆けつけた顧客やジャーナリストの賞賛の言葉と、鳴りやまない拍手を全身に浴びながらデザイナーを引退した。1700人の招待客を前に200人のマヌカンがゴルチエの代表作をダイナミックなスペクタクルのように披露。このような栄光に包まれながらオートクチュールの一線から退いたゴルチエは、フランスの誇りです。
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