2020年1月4日

ギャレット・デ・ロワ

新年にいただくギャレット・デ・ロワは、年々種類が増え選ぶのに迷います。レモンやリンゴ入りもあれば、チョコレートやココナッツ、コニャック入りもある。私が一番好きなのはクラシックなアーモンド入り。一度食べたら止められないとばかりに、毎年少なくとも3回は買いに行く。パイでできていて軽いから体重に危険性はない、と思っています。でもやはりちょっと心配なので、誘惑に負けないように、できるだけギャレットを見ないよう努力しています。

ウインドウに華やかに飾られた魅惑的なギャレット・デ・ロワ。
一口ずつでいいから、全部味わいたい。

中に入っているフェーヴもギャレットの生地と同じように種類豊富。フェーヴは「そら豆」のことで、胎児に似ているのでギャレットの中に入れるようになったのです。

というのは・・・(すでに知ってる方がたくさんいらっしゃると思うけれど)
長い間待ち望んでいた、世の救い主が生まれたことを知った東方の3人の博士が、ベツレヘムに行き、キリスト生誕を祝ったのが1月6日だったとされています。東方の三博士が参拝したこの日はエピファニー(公現祭)と呼ばれ、キリストが公に出現された日なのです。エピファニーは出現という意味です。そのためにフェーヴを入れたお菓子が生まれたのに、今ではギャレットの中にミニの動物やおもちゃなどが入っているのです。宗教と関係ない、新年のお祝いのお菓子になっているのでしょう。

東方の三博士がベツレヘムに向い、
生誕した世の救い主キリストがを参拝。

ギャレット・デ・ロワの「ロワ」が王さまを意味するので、革命の時世にはギャレットを廃止しようとの呼びかけもあったのですが、反対され、結局「平等のギャレット」などと奇妙な名をつけて、通常通りパイのお菓子を作って切り分けて食べていたのです。この「切り分ける」ことに意義があり、皆で同じ食べ物を分かち合うことが大切なのです。そこにキリスト教の教えが込められています。

フェーヴが入ったのに当たった人は、その日一日だけ王さまか王妃さまになって冠を被るというお遊びは他愛ないけれど、どんなフェーヴか、それが誰に当たるかと毎回ドキドキして、結構楽しい。

裕福な人々のエピファニーのお祝い。

庶民たちのエピファニーのお祝い。
フランスでは12月末から1月中旬までギャレット・デ・ロワが売られています。大統領官邸では、優秀な職人賞に選ばれたパティシエたちが作った巨大なギャレットを、大統領夫妻がカットします。でも共和国なので王さま、王妃さまを選ぶフェーヴもなければ冠もありません。一年の初めにフランスの伝統的お菓子を、大統領と国民が分かち合うのは素晴らしい習慣です。

年々オリジナリティーがあるギャレットが増えてきました。そのいくつかをご紹介します。

可愛い動物の顔が描かれているキュートなギャレット。
添え付けの冠もかわいい。
50人用の大きなギャレット。こんなに大きいのを見たのは初めて。
お値段は200ユーロ。

さすが日本人パティシエならではのアイディア。
お抹茶入りです。冠にも気品があります。
円形がほとんどだったのに、四角も登場。
こうなると来年への期待が今から湧きます。