サン・ジョルジュ(12号線)
聖人ジョルジュを称える駅名。日本語では聖ゲオルギオス。303年4月23日に殉死。
ラファエロ作の「サン・ジョルジュ」 |
ドラゴンの生贄にされそうになったカッパドキアの王女を、ひとりで勇敢に戦って救ったのが、ローマ人兵士だったジョルジュ(ゲオルギオス)だったと伝えられています。
キリスト教徒の軍人を父として生まれ、同じように軍人になった彼は、度々迫害に会ったにもかかわらず、キリスト教布教を続けていました。けれども当時のローマ帝国皇帝ディオクレテイナヌスが、増える一方のキリスト教徒に不安を感じ、帝国安泰のためにローマの神々崇拝を義務付けます。にもかかわらずキリスト教に改宗する人は後を絶たず、逮捕、処刑の命令が出され、ゲオルギオスも捕らわれ殉死したのです。
その後ヨーロッパ各国で守護聖人と崇められるようになり、様々な画家の創作意欲も掻き立てたし、彼の命日は聖ゲオルギオスの日とされ祝っている国もあります。聖ゲオルギオスがドラゴンを退治したとき流した血が赤いバラになったという伝えもあり、イングランドでは「セント・ジョージの日」に赤いバラを胸に飾ることもあるそうです。聖ゲオルギオスの象徴の白地に赤い十字はそのままイングランドの国旗となり、イギリス国旗にもセント・ジョージ・クロスが入っています。
イギリス国旗。 中央にセント・ジョージ・クロスが見られます。 |
スペイン語では「サン・ジョルディの日」とされ赤いバラや本を贈答する地域もあるそうです。本を送るのは、聖人が殉死した4月23日が文豪シェイクスピアの誕生日であるからという説と、スペインでは20世紀初頭から始まった軍事独裁政権で、カタルーニャ語使用を禁止され、住民たちが民族団結を唱えながら秘かにカタルーニャ語の本を贈り合っていたという説があります。
ユネスコでこの日を「世界本の日」として、様々な国で様々なイヴェントを行っていますが、これはカタルーニャで4月23日に本の贈呈を行っていた習慣からの発想だそうです。
ギュスタヴ・モロー作 「ドラゴンを退治するサン・ジョルジュ」 |
一方、ゲオルギオスを処刑させたローマ帝国皇帝ディオクレテイナヌスは健康を害し、305年に引退し、クロアチアの首府スプリトに建築させた壮麗な宮殿で余生を送りそこで生涯を閉じます。
ローマ帝国皇帝ディオクレテイナヌス (244-311) |
ディオクレテイナヌスが引退後暮らし生涯を閉じた宮殿を再現した絵。 |
サン・ジョルジュの名はパリのメトロの駅名の他、広場や道路名にもなっています。特にサン・ジョルジュ通りには著名人が足跡を残しています。8番地で画家ドガが生まれ、ルノワールは35番地にアトリエ兼住まいを持ち、文学の巨匠ゴンクール兄弟は43番地に暮らしていました。
ルノワール作「サン・ジョルジュのアトリエ」 |
コメントを投稿