2021年5月8日

高田賢三さんのコレクション、オークションに

 昨年秋にパリで亡くなった、デザイナー高田賢三さんがコレクションした貴重な品が、5月11日、シャンゼリゼに面したアールキュリアルでオークションにかけられます。600点を超える数で、競売前の5月3日から8日までと、10日にアールキュリアルで展示され、その間、誰でも見られます。

展示されている品すべてに、賢三さんの思い出がこもっているし、それなりの物語があるので、一点一点見るにつけ、懐かしさで胸が締め付けられる思いです。

会場には6区の賢三さんの自宅の一部を再現。ダイニングテーブルの上には、ムラーノ島のガラス工房に特別に注文したグラスがありますが、そのグラスでシャンパーニュをいただいたこともあるし、賢三さん自身がデザインし、製作を依頼した漆器でディナーをいただいたこともありました。そうしたときには、レストランTOYOのオーナーシェフがスタッフとともにキッチンで腕を振るい、絶品を味わったものです。賢三さんは、親しい友人が喜ぶことをするのが大好きな、人情味あふれる人でした。

長い廊下の壁に掛けられていた19世紀の日本の屏風は、特に賢三さんが気に入っていて、以前住んでいたバスティーユの家でも飾っていたし、プレイエルのグランドピアノで、ベートーヴェンの「エリーゼのために」をひいてくれたこともあります。あまり知られていませんが、ピアノのレッスンを受けていた時代もあるのです。こうした品もオークションされます。

家具に関しては、各部屋に合う特別注文で、時には数回作り直してもらったと言っていたのもあります。お能をテーマにした賢三さんの手による絵も数枚あるし、紀元前と推定される中国の木製の馬もあります。

この特注家具も、賢三さんデザインのクッションも、
後方の情緒ある日本画も、すべてオークションされます。

賢三さんが最後まで愛用していた仕事机と椅子。
これもオークションにかけられます。2020年1月の写真です。


限りないほどたくさんあるコレクションが、それぞれ異なる新しい持ち主と暮らすようになるのでしょうが、やはり寂しさを感じないではいられません。数年前から賢三さんに毎月お会いしていたので、どの品も親しみがあり、無理やり引き放されるようなのです。

高田賢三さんは、ほんとうにいい人でした。あれほど才能があり、それでいてシンプルで寛大な人は稀だと、フランス人も声を揃えて言います。世界に誇れる稀有な日本人です。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

川島ルミ子様、
いつも素敵な記事をありがとうございます。パリ地下鉄のお話はとても勉強になります。そして、高田賢三さんとのご交流の逸話もいつも楽しみにしていました。私は60代で、若いころはアンアンやKENZOさんや山本寛斎さんのファッションに憧れていました。最近では、私(夫も)は賢三さんのパリのインテリアデコをADの雑誌等で見ていていまして、大好きで、真似をして屏風やクッション等をアパ-トに飾ったりしています。

昨年賢三さんが亡くなられて、とても悲しく、最近自分がワクチンを打っても、何故後一年生きられなかったのかと思ったりもしています。今回のオークションも参加させていただきましたが、予算的に難しかったんですが、いくつか買いたい物を考えていました。例えば、ブロンズの壺、久谷の壺と布団の絵、着物の生地のクッション等です。ブロンズの鯉の図柄の壺は割とお手頃で1500ぐらいまでしかいかなかったんですが、一瞬迷ってしまって、買えませんでした。他の欲しかった物はもっとどんどん高くなっていって、手が出ませんでした。壺が変えなくてとても落ち込んでいたんですが、結果的に、TAKADAのブランドの日本的な刺繍の入った黒のハーフコートを買いました。300EURO以下の査定金額なのに、どんどん上がって行って、1500まで出してしまいました。落とせても、少し複雑な心境にはなりましたが、何よりも賢三さんのデザイン作品なので良かったと思います。

また、ブログで賢三さんとの思い出のお話やお写真を拝見できたら有難いです。