2022年5月15日

18世紀の煌めきは永遠

4年もの歳月を費やした工事が終わり、昨年7月にオープンしたオテル・ドゥ・ラ・マリーヌ(海軍館)。18世紀の王室家具調度品保管所だった時代の、優れた装飾芸術を満喫できる博物館として公開されるので、18世紀に並々ならぬ興味を抱いている私は、直ちに訪問。

その時、この館が辿った歴史をブログに書き、いつか再びゆっくり見たいと思っていたら、突然、招待状が送られてきたので喜び勇んで出かけました。私がメンバーになっているフランス芸術報道組合がオーガナイズしたので、その日集まったのは顔見知りの人が多い。当然、話題も弾み、久々の楽しく充実したひとときを過ごしました。

舞踏会やレセプションが繰り広げされていたグランサロン。
この館でもっとも広く、もっとも絢爛。


18 世紀の卓越したテクニックで創作された、
クリスタルのシャンデリアが至る所で華麗な輝きを放っていて、
身も心も奪われる。


海軍館内にある家具調度品は、新たに再現したのではなく、すべて18世紀を生きていた本物ばかり。今なお存在している国立家具保管所やアンティーク店で見つけた、18世紀の息吹を誇らしげに放つ類まれな品のみ。だから、感慨もひとしお。


壁を飾るタペストリーも家具もテーブルも、
18世紀の装飾アートがいかなるものかを語る貴重な証人。
背の高い鏡は、当時の王侯貴族の館に欠かせないものでした。

壮麗なヴェルサイユ宮殿で絢爛豪華な生活が営まれ、諸外国の王侯貴族の憧憬を掻き立てていた、黄金時代のアール・ド・ヴィーヴルを、パリ中心で堪能できるのは、とても幸せなこと。特に時間的な制約があるツーリストにとっては、素晴らしいプレゼント。何しろこの海軍館はコンコルド広場に面しているのだから、この上なく便利。

私は直ぐに興奮する性格なので、モニュメントを初めて訪問するときは、気持ちが高まっていて、見落としがあったりすることが多い。でも、2度目の時にはある程度落ち着いているので、見るべきものをきちんと見ることができる。今回も同じ。


ダイニングルームの壁際の装飾。
エレガントなカーヴを描くコンソール、その上の控え目な燭台、
壁の花柄装飾、それにマッチするモチーフの椅子。
このような小さな場所にも、洗練せれた感性が光っています。


フランスの時計技術はかなり優れていて、
ルイ14世、ルイ15世、ルイ16世の時代に製作された置時計が、
今でも正確に時を刻んでいます。

王室家具調度品保管所の所長は、この館に夫妻共々暮らしていました。
その一人、ヴィル・ダヴレー男爵所長夫人の優美極まりない寝室。
ベッドの左下には愛犬用のお洒落なベッド。
飼い主によってワンちゃんの運命も異なるものだと痛感。

所長のバスルーム。広さも装飾も見事で、いかに優遇されていたかわかる。

この日の訪問は少人数だったので、各部屋のディテールも時間をかけて鑑賞でき、心が豊かになった感じ。本や絵画、あるいは舞台劇、オペラなどもそうだけれど、2度3度と繰り返して読んだり観たりすると、新たな発見があるもの。モニュメントも同様。今回味わった幸せな余韻は、当分の間残ると思う。


ゆったりした訪問を終えて大満足。
やはり、いいものが精神に与える影響を大きい。