2020年4月2日

メトロの駅名は語る 148


Rue du bac
リュ・デュ・バック(12号線)

バックは平底の渡し船のことで、その名の道路に面したメトロの駅名です。

セーヌ川を横切るバック。

かつて左岸のヴォジラールは石灰石が豊富な地域でした。そこで採石した石灰石を運ぶために現在のバック通りを通り、その後、渡し船にのせて右岸に渡り、チュイルリー宮殿建築に必要な石材を運んでいたのです。16世紀のことでした。

バック通りメトロはルーヴル対岸のヴォルテール河畔から、学生街のセーヴル通りまで続く1000メートルを超える長い道路です。パリ左岸のほぼ中央にあるこの通りには18世紀に多くの邸宅が建築され、後年著名人が足跡を残しています。

44番地にはアンドレ・マルローが住んでいたこともあり、ここでゴンクール賞を受賞した「人間の条件」の一部を執筆し、97番地の邸宅には評論家で作家のスタール夫人が数年間暮らしていました。98番地にはかつてキャバレーがあり、そこにナポレオン暗殺計画の首謀者カドゥーダルが隠れ住んでいたこともあります。当時の2人のエンジェルのレリーフが、現在のお店の入り口の上に残っています。作家シャトーブリアンは120番地の邸宅に住みそこで生涯を閉じています。

スタール夫人が暮らしていた邸宅。

ナポレオン暗殺を企てたカドゥーダルが隠れ住んだ家。
当時はキャバレーで、
その時代のエンジェルの装飾は今でも残っています。

シャトーブリアンが住み生涯を閉じた邸宅。

修道女カトリーヌ・ラブレに聖母マリアが出現し、「奇跡のメダイユ教会」とか「不思議なメダルの礼拝堂」と呼ばれる祈りの場があるのは140番地です。

世界中から人々が集まる「奇跡のメダイユ教会」
リュ・デュ・バック駅でメトロをおり、バック通りの左右に並ぶ小さなブティックを見ながらをゆっくり散策するのは結構楽しいです。