2016年1月5日

マリー・アントワネット 絵で辿る生涯 44

行く手をさえぎられた国王一家の馬車。
国王逮捕で歴史に名を残した
ドルーエ。
この豪華な馬車に乗っているのは国王一家だと直感的に悟ったドルーエは、次に通る町ヴァレンヌで詳しく調べようと、馬を走らせます。

ヴァレンヌに着いた彼は、革命に賛成する人を大急ぎでかき集め、馬車が到着するのを待ち、その姿が見えると勢いよく襲いかかったのです。

ヴァレンヌ町長のソースが呼ばれ、ドルーエがパスポートを調べるようにと目を光らせながら言う。
町長が見たところパスポートに異常はない。自分の町で騒ぎを起こして欲しくなかったソースは、そのまま通そうと思う。ところが、ドルーエは町に留めておくことを執拗に要求する。

それではお疲れでしょうからと、食糧品店を経営する町長ソースは、住まいの2階に旅人が休めるよう準備をします。
民衆に取り囲まれ身動きできない状態に
追い込まれました。

国王一家としては一刻も早くその場を逃れたかったに違いありません。けれども住民が集まり、馬車を取り囲んでいるために、身動きできない。

きっとその内、衛兵たちが大挙して到着するだろう。案ずることはない。本来はシャロンで合流し、その後護衛にあたるはずだったショワズルが駆けつけるだろうし、ヴァレンヌから護衛にあたることになっているブイエも兵士と到着するはずだ。
町長が言うように長旅で疲れているから、味方が到着するまで休むとしよう。楽観的なルイ16世はそう判断する。

国王は細い階段をのぼって2階へと向う。
王妃も子供たちも、王の妹もそれに従います。
取り押さえられた国王一家の馬車。

ヴァレンヌの町長ソース。
マリー・アントワネットにとって、それは初めて味わう屈辱でした。こんなボロボロの家で休むですって、ハプスブルク家に生まれ、フランス王妃となったこの私が?
崩れそうな階段をのぼっているときにも、彼女は凜とした態度を保っていました。

急に空腹を感じたルイ16世は何か食べるものをと要求します。ワインも欲しいと付け加える。
粗末なテーブルの上に食べ物が並べられると、国王はいかにも満足げに口に入れる。彼はいかなるときにも旺盛な食欲があるのでした。その傍らでマリー・アントワネットは、一切手をつけようともせず、夫を厳しい目で見つめていました。