秋のマロニエ。情緒がありますね。 |
・・・ああ、マロニエよ、わが悲しみ、わが悩み、わが喜び。
わが秘密を知るものは、マロニエよ、汝にのみなり。・・・
33歳の永井荷風。 |
そのときの体験を綴った「ふらんす物語」はかなり感傷的。
秋に思い出すのは多分そのためでしょう。
・・・パリでは樹木一本でも野生のままにして置かない。
枝を切る、高さをそろえる・・・
特に秋は。
38歳の横光利一。 |
・・・磨かぬ石炭のように黒黒と堅そうな幹は盛り繁った若葉を垂れ、
その葉叢の一群ごとに、やがて花になろうとする穂のうす白い蕾も頭を
擡げようとしていた。・・・
このような繊細な心で綴った文を読むと、マロニエの木がいつもの木ではなく、芸術的に見えたり、息吹が感じられ貴重なものとなり、より一層いとおしくなります。
急に寒くなったパリ。今朝から暖房が入っているパリ。マロニエの葉が次々と落ちる季節です。