王妃は一日として祈りを欠かしたことはありませんでした。 |
判決文 |
その後しばらくして、ロザリーが牢屋に入ってきます。この日で最後かと思うと彼女は心が痛むばかり。声を発することすらできませんでした。
やっとの思いで口を開き、王妃にブイヨンを勧めます。当初は断っていたマリー・アントワネットでしたが、ロザリーの優しさに打たれたのか、それでは少しだけと、スプーンを手にします。
支度が整ったその時、牢屋のドアが開き、革命裁判長エルマンを先頭に、数人が入ってきました。
エルマンが手にしていた判決書を読み上げようとすると、王妃はその内容をすでに知っているから、読む必要はないときっぱりと言います。
国王死刑執行人 シャルル・アンリ・サンソン。 王妃の死刑執行人は その息子のアンリ・サンソン。 |
後は革命広場に向う支度ををするのみとなりました。
死刑執行人アンリ・サンソンが、大きなはさみを手に王妃に近寄り、荒々しくボンネットを取ります。王妃の髪の毛を無造作に切り、先ほどと同じように無造作にボンネットを頭に戻します。
その後、手を縄で縛られたマリー・アントワネットは、極悪犯罪人のような屈辱的な姿でした。それにもかかわらず、姿勢を正し、威厳を保ったまま監獄の外へと連行されていきました。
あれほど憧れていたコンシエルジュリーの外の光景。それを再び目にしたのが、この世とのお別れの直前だった王妃。
37歳の美しい盛りの高貴な人生が、快晴の空の下で終わろうとしていました。