2016年4月20日

マリー・アントワネット 絵で辿る生涯 77

ルイ・シャルル王子の愛犬、ココ。
マリー・テレーズ王女と共に
タンプル塔から自由の世界へと向います。
ココをかわいがっていた王子。
マリー・テレーズがタンプル塔を去った日、
人懐っこそうな犬も自由の身になったのでした。
ココと呼ばれるそのエスパニエル犬は、
ルイ・シャルル王子が特別にかわいがっていた犬でした。

白と褐色に黒い点が所々についているココは、格別にかわいらしい顔ではなかったけれど、温厚で、純情で、ルイ・シャルルはまるで弟のように大切にしていたのです。

マリー・テレーズが釈放されるときに、ぜひココを連れて行きたいと彼女は頼みます。
「弟がとてもかわいがっていましたから」

その弟も、母も、叔母も、皆、世を去ってしまったことを王女が知ったのは、タンプル塔から出て行けることが分かったときでした。
父とフランスのために
祈りを捧げる王子。
それまで彼女は、皆、バラバラになったとはいえ、生きていると信じていたのでした。

マリー・テレーズが家族のように思っていたココは、彼女の行く先々に同行します。
ナポレオンが戦いに敗れ、皇帝の座を失い流刑された1814年、ルイ16世の弟プロヴァンス伯が、フランスに戻り王政復古が行なわれ、ルイ18世を名乗ります。マリー・テレーズも夫とココと共に戻ります。けれども、すでに老犬になっていたココは、その年に世を去ります。22歳でした。

革命を生きたココの生涯もまた、波乱に富んだものだったのです。
そのココは今、パリのセーヌ川近くに建築された、由緒ある貴族の邸宅の庭園で永遠の眠りについています。そこには、ココのための立派な記念碑もあります。