2020年3月2日

イヴ・サンローランのミューズ、ベティ・カトル-展

イヴ・サンローランには二人のミューズがいました。ルル・ド・ラ・ファレーズとベティ・カトルーです。ルルはアトリエでサンローランのアシスタントも務め、ベティはマヌカンになったり仕事を終えたサンローランを、気晴らしのために夜の街に連れ出したりしていました。

サンローランの二人の女友だちの共通点は、裕福な良家に生まれたこと。教養があり卓越したセンスの持ち主だったのも、いい環境に育ったからだと見られています。もうひとつの大きな共通点は、既成観念にとらわれることなく、自分に忠実に自由に生きていたこと。サンローラン、ルル、ベティは時代をつくるトリオだったのです。

時が経ちサンローランが去り、ルルが去り、ベティだけが当時の面影を保ちながらサンローランの偉大さを今でも世に示しています。彼女は持っていたサンローランの作品約300点を、2019年にイヴ・サンローラン美術館に寄贈。それによって美術館の秘蔵作品が一挙に増えました。今回の展覧会では天才デザイナーの代表作のサファリルック、パンツルック、スモーキング、そしてベティが最も好きなレザー作品など45点をまじかで鑑賞できるし、トリオ時代の写真も豊富で、良き時代とサンローランのエスプリにたっぷり浸れます。

サファリ・ルック。
ベティがそこに立っているような印象を受けます。
昼間の街着。
パンツ・ルックが圧倒的に多い。

夜のお出かけ用のシックな装い。
若き日のサンローラン、ルル、ベティの写真も豊富。
シャネルのマヌカンをしていたこともあったベティは抜群のプロポーション。
今でもそれを守っているのは尊敬に値します。
多くのモノクロの写真が、かつての良き時代へと導きます。
イヴ・サンローラン美術館のエントランスは、
彼が存命中と変わっていません。
この階段を彼は毎日上り、クリエーションに励んでいたのです。

エントランスのシャンデリアは特にサンローランのお気に入りで、それを付けた時には興奮しながら、刺繍の巨匠フランソワ・ルサージュに電話し、すぐに来てほしいと言ったのです。なぜなら、シャンデリアの類まれな輝きを刺繍で表現してほしかったのです。ルサージュはサンローランの依頼を受けジャケットに精密でゴージャスな刺繍を施し、シャンデリアの輝きを布地に実現しました。それが「私のメゾン」と名付けられた華麗極まりないジャケットです。この貴重な逸話は生前にルサージュが私にしてくださいました。シャンデリアを見るたびに思い出し懐かしさがこみ上げます。

Musée Yves Saint Laurent
5 avenue Marceau
75116 Paris
3月3日~10月11日まで