ヴェルサイユ宮殿での生活は、朝起きてから夜寝るまで儀式に続く儀式。食事でさえも公開で、着飾った貴族や諸外国大使が見つめる中だったのです。
この、儀式に埋もれる、まるで舞台の上で演じるような、見せるための宮廷生活を考えたのはルイ14世。国王の威厳と華やかさを、国民と外国に見せるのが目的だったのです。
シェーンブルン宮殿でのびのびと育ったマリー・アントワネットには、規則だらけの生活は苦痛でしかなかった。まだ遊びたい年齢の王太子妃は、ノアイユ伯爵夫人によって、がんじがらめにされていたのです。
駐仏オーストリア大使 メルシー伯爵 |
マリー・アントワネットの父の故郷である、ロレーヌの名門貴族出身のメルシー伯爵は、トリノ、サンクトペテルブルクのオーストリア宮廷代表として活躍。その後マリア・テレジアの信頼を受け、1766年にフランス駐在大使に抜擢されました。フランス王太子とマリー・アントワネットの結婚実現に大きな役割も果したのも彼です。
革命が起きた1789年にフランスからベルギーに逃れ、その後ロンドンに移り、その地で67歳の生涯を閉じます。
このようにマリー・アントワネットの日々は、ガラスケースの中にいるようなものだったのです。