2015年12月2日

マリー・アントワネット 絵で辿る生涯 30

プティ・トリアノンに飾られている、
バラを手にする王妃の肖像画
マリー・アントワネットは花が好きな人でした。
1774年、王妃になったマリー・アントワネットに、国王がプティ・トリアノンをプレゼントしたときの言葉からも、それが分かります。
庭園にふさわしい
シンプルなドレスと
むぎわら帽子の王妃。
「あなたは花がお好きです。マダム、余はあなたに差し上げるブーケがあります。プティ・トリアノンです」
そう言いながらルイ16世は、531個ものダイヤモンドがついたプティ・トリアノンの鍵を王妃に手渡したのです。

マリー・アントワネットは確かに花が好きでした。
中でも華やかな姿を見せるバラを一番愛していました。
それは彼女に、楽しい子供時代を過ごした、シェーンブルン宮殿を思い起こさせる花だったのです。
広々とした庭園にはバラが咲き乱れていた、懐かしいシェーンブルン。プティ・トリアノンを手にしたとき、彼女はそれをシェーンブルンにしたかったのです。

マリー・アントワネットがこよなく愛していたのは、花弁が豊かなオールドローズ。
ベルギー出身の画家ピエール=ジョゼフ・ルデゥテの植物に関する知識と、緻密なデッサンと絵に
マリー・アントワネットが
評価していた植物学者であり
画家のルデゥテ
心を動かされた王妃は、彼を宮廷の収集室付素描画家として任命します。彼は「バラの画家」と呼ばれていたほどで、マリー・アントワネットに少なからず影響を与えていました。彼女はルデゥテからバラの描き方の手ほどきも受けたと語られています。

バラは常に王妃の側にいました。庭園に咲き乱れ、プティ・トリアノンの壁布にも、椅子にもベッドカバーにも華やかなバラが描かれていました。
ヴィジェ=ルブランの筆によるマリー・アントワネットの肖像画には、一輪のバラを手にする姿が描かれているのが数枚あります。そのバラもルデゥテが画集に残しています。

花の女王のバラは、フランス王妃にふさわしい気高い花です。