2011年3月5日

ディオール、ガリアーノによる最後のコレクション

ディオール本店のインテリアを
再現した舞台
ガリアーノ解雇を決定したディオール社ですが、ガリアーノ創作のプレタポルテ・コレクションを予定通り3月4日に発表。これが最後とあって、会場のロダン美術館界隈は、異常な熱気に包まれていました。

招待状のコントロールは何度もあり、入り口から伸びる淡いグレーのカーペットを通りながら、中庭に作られた大きなテントの仮説会場に入ると、ビシッとした服装の礼儀正しい男性が席まで案内。

会場はいつもの通り、壁も床も黒一色。
そして舞台は、ディオール本店のインテリアを再現した、シックなグレーを貴重とした装飾。豪華なシャンデリアは、華やいだ雰囲気を出すというより、私にはかえってもの悲しさを感じさせました。

会場のロダン美術館前の車道も
歩道も報道陣でいっぱい
ガリアーノはどれほど今日のコレクションを、この装飾の中で、自らも参加して発表したかっただろう、と思ったからです。

ショーは30分遅れで始まりました。それもいつもと同じ。
と、突然、ディオールのトレダノ社長の姿が舞台の照明の中に浮かびました。
これは異例なことですが、誰もが事情を知っているので、全身を耳にして聞き入ります。

数枚に及ぶ声明を読み上げる間、会場は静まったまま。
・・・才能あるデザイナーと、残念なことに別れなければならない。ディオールは1947年の創立以来、常に人への
敬意を重んじてきた。
それなのに、このたびの彼の発言は許しがたい。
我々は全員非常に大きな悲しみにくれている・・・

声明を発表するトレダノ社長
そして最後に、この後発表するのは偉大な才能の持ち主のコレクションです、と感情を抑えた引き締まった顔で語り終えると、会場の隅々まで拍手が響き渡りました。

私の記憶では、ガリアーノという名を一度も発することがなかったと思います。そこに、トレダノ社長の、やりきれない思いが込められていたように感じられました。

ショーでは63点という多くの作品を発表。
軽快な音楽もいつもと同じ。
マヌカンの見事な着こなしもいつもと同じ。
ただし、いつもはフラッシュを浴びるセレブリティは誰もいなかったし、最後に登場すべきガリアーノの姿はもちろんなく、その代わりにアトリエの人が勢ぞろい。
            
フィナーレはガリアーノにかわり
アトリエの人が登場
ジョン・ガリアーノという比類なき天才が、 今、ディオールという格別なひのき舞台から去った。
その寂しさはあまりにも強く、熱いものがこみ上げてくるのを、どうしようもありませんでした。


ガリアーノはディオール社から離れました。けれども彼のデザイナーとしての活躍は、自分の名のメゾン、ジョン・ガリアーノで続けていけるのです。

ガリアーノによる
最後のデフィレ
今回の事件から多くを学び、彼の稀にみる才能が、 今後も華麗な花を咲かせてほしいという思いのみが残ります。