エジプトの時代から存在していたハンカチは、高貴な人々のみが使用していた贅沢品だった。フランスの王侯貴族が愛用するようになったのは、17世紀、ルイ14世の時代。レース飾りや金糸銀糸の刺繍入りだけでなく、パールを付けたのさえあった。布に関してはシルクや麻で、実用的というより身だしなみのためであり、人目をひくためだった。形もまちまちで、長方形があるかと思うと、円形や驚くことに三角形さえもあった。
ハンカチと言えば、ルイ15世に近づくために、夜会でわざとハンカチを落とし、国王の気を引くことに成功し、ついには公式愛妾になったポンパドゥール夫人を思い出す。
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18世紀には、 レースのハンカチが好まれていた。 |
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19世紀になると、 貴婦人のおしゃれの仕上げに、 ハンカチは欠かせなくなった。 |
特別な感性の持ち主だったマリー・アントワネットは、当時のハンカチの形がエレガントでなく、自分の好みに合わないと嫌っていた。彼女が気に入っていたのは正方形のハンカチで、これはルイ14世の時世に見られたとされている。
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内気で真面目なルイ16世 |
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華やかなオーラを放つ マリー・アントワネット |
妃のためなら何でもするルイ16世は、法令を発布する。1784年9月23日、ヴェルサイユ宮殿で王の開封特許状が提出され、1784年12月10日、高等法院で登録された。
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ルイ16世が ヴェルサイユ宮殿で提出した開封特許状 |
フランスのハンカチはすべて正方形に統一する。縦と横の長さを同じに製作し、違反した場合した場合には300リーヴルの罰金及び没収に処すという厳しい内容だった。
1793年1月21日、ルイ16世がコンコルド広場で処刑される歳に、死刑執行人サンソンが国王の両手を背中で縛ったのは、国王が持っていたハンカチだった。他の処刑者は縄だったが、ルイ16世だけがハンカチだった。
正方形のハンカチは、その後、世界中に広まったのだから、やはりマリー・アントワネットは唯一無二の女性と言える。
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19世紀初期の優雅なモチーフ |
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19世紀半ばのハンカチ |
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19世紀半ばのフェミニンで きめ細やかななモチーフ |
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19世紀末の絵画のようなデザイン |