2025年8月12日

「都市の森」になったパリ市庁舎前広場

 昨年10月から改造が行われていたパリ市庁舎前広場。地球温暖化から市民を守るために、パリ市が決定した「都市の森」が実現し、大変貌。今までの石の広い広場に、約50本もの大木が植えられ、その足元には種々様々な背が低い木やシダ、ツタなどが植えられている。その数は2万を超える。散歩道もあるし、雑木林に入ったかと思える手つかずの自然もある。

パリ市庁舎前広場に生まれた「都市の森」

パリの真っ只中にいることを忘れそうな、
緑豊かな広場。済んだ空気で体も心も大喜び。

6~10mの高さの木々は、ドイツやオランダで育てられた中から選ばれ、都会の空気に耐えられるか何度か移植しながら観察。20年以上の樹齢のもある。気候の変動に耐えられる木であることが重要とされ、カエデ、エノキ、オークなどが多い。

こうして誕生したパリ市庁舎前広場の「都市の森」。豊かな木々の向こうに見える市庁舎は、離れた場所からだと、まるで、森の中にあるシャトーのよう。市庁舎はルネサンス様式の建物なので、この文化が発達したロワール河畔の名城かと思えるほど情緒がある。

まるでロワール河畔のシャトー。
市庁舎前広場では、毎年、音楽祭などイヴェントがあるので、
その実現を妨げないスペースは確保している。

同じ計画はコンコルド広場、ルーブル美術館の北側でも実現される。小さい空き地にも背が低い植物が植えられ、加速度的に緑が増えているパリ。予定では2030年には「都市の森」のおかげで気温が4度も下がるとのこと。

車追い出し作戦も続いているし、市民生活を優先する姿勢がはっきり伝わる、素晴らしい計画。

2025年8月10日

創業160周年を迎えたプランタン

 パリの老舗デパート「プランタン」がオープンしたのは1865年11月3日で、今年は160周年の記念すべき年。そのお祝いにショーウインドーはパリのモニュメントのイラストで飾られ、とてもポエティック。記念品も豊富だし、今年ならではのイヴェントも多い。

160周年のよろこびがあふれる
老舗デパート「プランタン」。

スタイリッシュで上品なショーウインドー。
パリのモニュメントのイラストがさわやか。

プランタンの創立者はジュール・ジャルゾーで、「ボン・マルシェ」デパートの店員だった。そこに頻繁に来ていた女優オーギュスティーヌ・フィジャックと結婚後、セーヌ川右岸にデパート創業を決意する。1836年に誕生した、郊外とパリをつなぐサン・ラザール駅から近い場所が選ばれる。

ジュール・ジャルゾー
1834-1916
オーギュスティーヌ・フィジャック
1821-1883
1889年のプランタン

普仏戦争や火災で、一時、経営困難になるが、それを何とか乗り越え、その後は周囲の建物や土地を購入し拡大。鉄橋が建物をつなぎ、エレベーターも2基設置。前代未聞の新しい試みは、多くの人を驚かせ、魅了。その後もアールヌーヴォー、アールデコなど、新しい芸術を取り入れ、1921年にはエスカレーターをいち早く設置。

歴史を刻んでいるエントランスのモザイク。



随所にある彫刻は、まるで美術館のよう。

最上階のクーポールは、息を呑むほど美しい。
アールヌーヴォーとアールデコの過渡期の作品で、
第二次世界大戦の際には、
すべてのステンドグラスをはずし保管していた
貴重な芸術作品。

過去の重要なアートを守りつつ、進取の精神が息づいているプランタン。160周年おめでとうございます!!!

部分的に歴史的建造物に認定されている、
もっとも古いファサード。
1889年の建物と比べると、
最上部が近代的になっているだけで、
それ以外は当時と変わっていないことに感嘆にしないではいられない。