2025年11月7日

ルーヴル美術館 回収された王冠のお話

10月19日にアポロンのギャラリーから盗難されたフランス王家の宝飾品は、今でも連日ニュースで報道。用心のために、アポロンのギャラリーの数点の宝飾品をフランス銀行に移したそう。貴重な歴史を刻んだ品がいくつもあるから、賢明な判断だと評価されている。

盗難された8点の宝飾品の行方はいまだに不明。けれども、ナポレオン3世のお妃ウジェニー皇后の冠は、逃げる途中で落としたのか、破損しているものの、近くで見つかっている。修復は非常に困難だが、不可能ではないとルーヴル美術館館長が発表。この冠だけが盗まれた宝飾品の中で、唯一、回収され貴重な王家の宝物。

ナポレオン3世のお妃の王冠。1855年作。
ダイヤモンド1354個、エメラルド56個。
8羽のゴールドの鷲と8 つの植物模様が交互に連なるアーチの上に、
エメラルドとダイヤモンドの円形のドーム、
その上にダイヤモンドの十字架がある個性的な王冠。
   photo David Liuzzo


君主の偉大さを国民に見せるために王冠を考え出したのは、16世紀のフランソワ一世。それ以降、その伝統がずっと守られ、第二帝政のナポレオン3世もお妃も王冠を持っていた。ところが1870年、プロセインとの間に普仏戦争が始まり、貴重な宝飾品はまとめてフランス最大の軍港ブレストに運ばれ、その後は財務省の地下で保管するようになる。その後多くの王家の宝飾品はオークションで世界に散らばったが、皇后の王冠はそれを逃れたのだった。今回の盗難でも、奇跡的に取り戻せたのだから、運が強い王冠と言える。

1920年の皇后亡き後、彼女が名付け親になったマリー・クロチルド・ボナパルト王女に贈られるが、1988年に競売にかけられ、落札した人がルーヴル美術館に寄贈し、アポロンのギャラリーに展示されていたのだった。このように、ひとつひとつのジュエリーに貴重な物語がある。
ウジェニー皇后の右手の下にこの王冠が見える。
直系16,5cm  高さ13cm  幅15cm
皇后がつけてるティアラは今回盗難され、
いまでも行方がわからない。