2011年8月6日

聖母マリアに会った少女 ベルナデット 5

ペイラマル神父
ルールドの主任神父ペイラマルは、体が震えるのをどうしようもできませんでした。
目の前にいるベルナデットが語った言葉が、彼を動転させたのです。
「むげんざいのやどり」
それが、ベルナデットが洞窟からずっと口の中で繰り返していた言葉だったのです。

「その人はほんとうにそう言ったのだね」
「はい、そうです。私が今日こそ名前を教えてくださいってお願いしたら、その人はほほえんで空を見て、それから大きく手を開いて、そのあと胸のところで手を組んで、そういったのです」
「無原罪の宿り、と」
「はい神父さま」
「その言葉を前に聞いたことは?」
「いいえ、一度もありません。だから忘れないようにずっとくり返していたのです。神父さまに伝えたいと思って」


シスター、マリー・ベルナールと
なったベルナデット
ペイラマルは自分の体を支えることが出来ませんでした。感激があまりにも大きかったからです。
この子はうそをついていない。言葉の意味も知らずに、涼しげにこの子は言った。洞窟に現れるあの方が自分は「無原罪の宿り」だと。聖母マリアだと。

あのお方は、このルールドに現れて下さったのだ。何という感激!

それ以降、人々はフランス各地から、そして外国からも訪れるようになりました。
立派な教会も建築され、ひとりでも多くの人が泉の水を飲めるようにと、合理的な設備も整えられました。水のお陰による奇跡も相次ぎ、それはますます巡礼者をひきつけるようになったのです。
 
ベルナデットはその後、ヌヴェール市にある愛徳修道会のサン・ジルダール修道院の修道女になり、
マリー・ベルナールと名乗りようになりました。

1879年4月16日、復活祭の日。長年肺を患っていたベルナデットは、死の床にいました。昼近くにファブヴル神父が呼ばれ、その場にいた誰かがベルナデットの胸に木の十字架を抱かせました。
彼女にはもはや力のかけらさえも残っていなかったのに、その十字架をしっかりと抱きしめたのです。
弱りきった口から言葉が流れてきました。
永遠に眠りについている
ベルナデット
「心・・・から、あなたを・・・愛して・・います」
午後3時、ベルナデットの目が永遠に閉ざされました。35歳でした。

午後3時。
それは、キリストがゴルゴダの丘の上で息だえたのと同じ時刻でした。
あの時キリストは、苦しみながらも大勢の人の中に母がいるのを見ました。
そして言葉をかけたのです。
「なんじらの母」
と。
そのときキリストの母マリアは、キリストを信じる全世界の母となったのです。
巡礼者がたえない洞窟
マリアはやさしい母でした。マリアは我が子の最後を見届ける強さも持った母でした。
なんじらの母となったマリアは、ある日ルールドのベルナデットに現れ、彼女を通して世の人々を救うために奇跡の水を与えてくださったのです。

ベルナデットが小さな手で掘った土の中から湧き出た水は、そのときから一時として途絶えたことはないのです。

おわり