2024年1月13日

マリー・アントワネット自叙伝 17

 ついにデュ・バリー夫人に接近 

ある日、駐仏オーストリア大使メルシーは国王からの呼び出しを受けました。当然、メルシーは「いったい何事か」と緊張します。しかも呼び出されて行くのは、国王の執務室ではなく、デュ・バリー夫人のお部屋。彼女にお会いするために3階に向かいながら、もしかしたらあの事、つまり、宮廷中でどっちが勝つかと噂しているあの出来事では、と思っていたかもしれません。

デュ・バリー夫人のエレガントなお部屋に入ったメルシーは、改めて夫人の魅惑的な美貌に感動したようです。お母さまへの報告にそう書いたのです。それだけでなく、性格も悪そうではないと書いたのには、あきれてしまいます。

ヴェルサイユ宮殿3階にあるデュ・バリー夫人の居室は、
天井に至るまで金箔がほどこしてあり、大変優美でした。
もちろん、私は行ったことがありません。


私が満足したのは、言葉使いに品がないし、豊かな教養もないように見受けましたというフレーズ。さすが、お母さまが信頼を寄せている大使。見るべきことはちゃんと見ているのです。デュ・バリー夫人を褒めたのは、外交辞令というものでしょう。これで私の心も落ち着きました。


夫人と会話を交わし始めたころ、ルイ15世が入っていらして不満を述べられたのです。政治家と同じように本筋に直接入らずに、曲折した言い方だったそうです。結局、国王がメルシーに伝えたかったのは、愛妾が私に冷たくされて悲しんでいるから、仲介すべしという事なのです。貴殿が皇太子妃を何とか説得し、彼女からデュ・バリー夫人に話しかければよい、それだけのこと。

贅沢な宝飾入れ。セーヴル焼きを家具に取り入れるのは
当時、人気があったのです。
この中に、国王からいただいた高価なジュエリーを入れていたのです。

フェミニンで優しさがある椅子。
バラのモチーフが好きだったそう。


でもせっかくここまで順調に進んでいるのに、と私は迷わずにはいられません。数日間、今まで通りすましてデュ・バリー夫人を無視していたのですが、メルシーはついに最後の切り札を出したのです。態度を改めないと、お母さまが困るというのです。ちゃんと私の弱みを知っているのです。その上、劇作家賞をあげたいほど上手な筋書きを考えたのです。


忙しいお母さまに、これ以上迷惑をかけたくなかった私は、それを演じることにしました。