2009年12月5日

サタデー・ナイト・フィーバー


オペラ通りからのびるサンタンヌ通りの土曜の夕方は、異様な光景が毎週続いています。あちらこちらに行列が出来るのです。


気候のいい春から夏にかけてならともかく冬の骨まで凍りそうに寒い日でも、雨の日でも、行列、行列、そしてまた行列。そのほとんどがフランス人。

カップルもいれば、若者のグループ、家族連れもいる。
いくつもある行列からは、楽しげな話し声や快活な笑い声がわき上がり、道路一面に熱気が満ちている。

これはいったい何事、と行列の出発点に向かっていくと、それがナンと、ラーメン屋、うどん屋、お好み焼き屋なのです。

高級な和食レストランは以前からパリに何件かあったとはいうものの、日本の国民食とも言える、うどん、そば、ラーメン、焼きそばなどに、これほどフランス人が熱中するとは、驚き、驚き。一部のフランス人の関心をひいているのではなく、ごく普通の人の日常生活に必要な食になっていることが不思議。フランス人が、きつねうどんやみそラーメンを行列をまで作って食べるなどと、いったい誰が想像できたでしょう。

数年前まではスシ、サシミ、すき焼き、てんぷらなどが和食の定番でした。
馴染みのないそうしたお料理の名をすらすらと言えるだけで、
ステイタスになっていたほど高級感があったし、インテリのようにさえ思われていたのです。
お料理の名を聞いただけでは、どういった内容のものかさっぱりわからない。
そのために、近寄りがたい高尚なイメージがあったのも確か。しかも高い。
和食はほとんどのフランス人にとって高嶺の花だったのです。

ところがいつの間にかサンタンヌ通りの両サイドに、
庶民的なラーメン屋が軒を並べるようになり、爆発的な人気を呼び、
サタデー・ナイト・フィーバーの現象を起こすまでになってしまったのです。
これを見て、日本人はすごいと思いました。
食にこだわるパリジェンヌ、パリジャンの実生活に、これほどの影響を与えたことは、
とても重要なことのように私には思えます。
日本人によるフランス人の食生活の革命と呼んでいいほど。

このフィーバーは熱する一方で、
サンタンヌ通りのカフェなどが次々に買収され、
ラーメン屋のメッカになっているだけでなく、
手頃な値段の和食レストラン、というかお弁当屋さんも続々登場。

日本が世界一の長寿国であることと、
スリムな人が多いことがフランス人を刺激していることは確か。
でも、ラーメンが和食の代表的な食べ物だとは思わないでほしいですね。